「神風」から「kamikaze」という英語が生まれたのはナゼか?

神風特攻隊の実態:

第二次世界大戦中に敵の艦隊に飛行機ごと突っ込んでいった神風特攻隊を称賛する人たちは、自民党など保守系政治家の中にたくさんいます。

何千人という人たちが亡くなりましたが、その遺書を読んで、「素晴らしい!尊敬する。国家の英雄だ!」という感想を抱く若者がたくさんいるそうです。

写真(鹿児島県知覧基地で、知覧高等女学校三年生が桜の枝を振って、特攻隊の出撃を見送る。) 出典:知覧特攻平和会館

しかし、実際に神風特攻隊に所属し生き残った元隊員の人たちに訊くと、事実は異なるようです。

2014年4月30日付の朝日新聞に「特攻、伝わらぬ実像」というタイトルの記事がありますが、要点を以下に記します。

「志願ではなく強制だ。特攻隊員に選ばれて失神する者もいた。逃げ出して憲兵につかまり自殺する者もいた。逃げても地獄だし、言われたとおり突っ込んでも地獄。これが特攻の現実だ。お国への忠誠心などは後世の人間によるでっち上げだ。暗黒の戦前・戦中を美化しないで欲しい。」

「お国のために尽くしたいという気持ちから、喜んで命を差し出した勇敢なパイロットたち」という設定にはかなり無理があると私も思います。

感情に支配されて、歪んだ目で物事を見てはいけません。

海外での「kamikaze」に対する評価:

では、海外の人たちは神風特攻隊をどのように見ているのでしょうか?

「神風」はかなり有名な言葉になってしまったので、英語化されています。

手元にあるOxford Advanced Learner’s Dictionary 第8版(オックスフォード大学出版局)によると、「kamikaze」は次のように説明されています。( )内は私の邦訳です。

「(from Japanese) used to describe the way soldiers attack the enemy ,knowing that they too will be killed.」
(語源は日本語:自身が死ぬと分かっていながら敵に突っ込んでいく兵士を表現するために用いる)

「ka-mi-ka-ze」ではなく、「ka-mi-ka-zi」と発音しています。アクセントは二つの「ka」に置かれています。

「kamikaze」という単語は良い意味では使われていません。

「suicidal」と同義語で使われています。

同じ辞書の例文には「He made a kamikaze run across three lanes of traffic.」(3車線の道路を横切るという自殺行為を彼は行った)、と書かれています。

普通ならば絶対に行わない異常な行動、ということです。

研究社の新英和中辞典にも、「kamikaze」→「向こう見ずな,自殺的な,無謀な」という意味が書かれています。

フランスの同時多発テロでは複数の犯人が自爆しており、多くの欧米メディアが「kamikaze」と表現しました。

「kamikaze」は英語圏以外でも通用するみたいですね。

写真(フランスの同時多発テロを非難するオランド大統領) 出典:ANN

写真(フランスの同時多発テロを非難するオランド大統領) 出典:ANN

「kamikaze」の悲劇を繰り返さないために

「神風・・・」という言葉を聞いて英霊というイメージを抱くのは日本人の一部(反動右翼)だけでしょう。

戦中の過ちを直視せず自画自賛する姿はとても見苦しい。

一般的に、自分自身の評価を自分で正確に行うことは極めて難しく、客観的な正しい評価は他人にして頂くのが正解です。

自国の歴史解釈についても、他国の視点を取り入れないと、極右権力者にとって都合が良いものになってしまいます。

英霊と美化して表現してしまうと、同じ過ちを繰り返す原因になります。

少なくとも海外の人たちは「神風特攻隊」を尊敬していませんし、見習いたいとも思っていません。

その逆で、反面教師にしているのですね。

『自爆テロを「kamikaze」と表現するのは間違っている。英霊に対して無礼であるぞ!』、なんて文句を言ってもダメです。

国際的な評価は冷徹なのです。

感情に左右されることなく、冷静に物事の本質を見通しています。

我々日本人は謙虚に受け止めねばなりません。

同じく英語になってしまった「karoshi」(過労死)と共に、「kamikaze」(神風)についても我々日本人は真剣に反省し、原因を究明し、再発防止に努める義務があると思います。

以上

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