自民党が防衛費を10兆円に増やそうとしているのはナゼか?7つの問題点を簡単解説。

図(防衛費の推移) 出典:東京新聞

 2017年6月17日にNHKが報じたところによると、自民党の安全保障調査会は日本の防衛費を、NATO(=北大西洋条約機構)がGDPの2%を目標としていることも参考にして、十分な規模を確保すべきだとする提言をまとめました。中国や北朝鮮を念頭に置いており、安全保障環境の変化を理由に挙げています。政府への提言へ向けてさらに検討を重ねるとはいえ、かなり大胆なアイディアですね。

 この提案の問題点について述べます。

1)NATOの基準である「GDPの2%」を採用する理由がない
 地理的・歴史的経緯も全く異なるヨーロッパの数字をいきなり持ち出されても説得力がありません。日本は周囲を海で囲まれており、陸続きの国々と同列に論じることはできません。また、死刑制度・人権などの問題で西欧から指摘を受けると「外国基準を押し付けるな」と感情的反発をするくせに、都合の良い部分だけ数値を真似するのはおかしいですね。

2)中国や北朝鮮との軍拡競争に陥る
 敵とみなしている国よりも軍事予算が少ないとケンカに負けそうで不安だ、という感情論に支配されています。仮に軍拡競争をすることが正しいならば、際限なく軍事予算は膨らむことになり、肝心の国民生活が成り立たなくなります。軍需産業など、死の商人だけが良い思いをしても意味がないのです。

3)「外交は最大の防衛」という原則を忘れている
 あらゆる意味で国と国が密接に関わり合いながら成り立っている現代社会において、戦争という選択肢は幻想に過ぎなくなりました。自分の首を絞めることは行わないというのが大原則なのです。外交努力により戦争を避けるというのが最も賢く、最も安全で、最も安上がりな方法なのです。日本の問題は、中国や北朝鮮との外交努力を放棄するばかりか、歴史認識一つとっても、逆にケンカを売るような態度をとっていることです。「あいつらは言葉の通じないならず者だ」というプロパガンダを行い、国民に対して脅威ばかりを煽っています。外交という政治家の仕事を放棄しており、論外です。

 だいたい、日本には50基以上の原発と大量の核廃棄物があり、地震が頻発する国で、10万年以上先まで安全に管理する義務を負っています。非現実的で、不可能と言っても良い義務です。他国とケンカをしている余裕など無いのが分かりますね。

4)自民党の安倍総裁の意向を忖度している
 選挙での公認権という生殺与奪を握られている哀れなサラリーマン政治家にとって、党の最高幹部のご機嫌を損ねることは許されません。安倍さんが防衛費を増額したがっていることが分かっているから、その意向に従っているだけなのです。では安倍さんが防衛費を増やしたがっている理由は何か?それは、経団連の強い要望です。経団連は軍需産業で潤っている大企業を多数傘下に収めており、安保法制にも憲法改正にも賛成です。集団的自衛権を可能にして武器輸出もしたがっている死の商人たちです。良心を喪失した組織に裏からコントロールされているのが自民党です。

参考記事リンク:
あなたを生きにくくしている真の原因はこれだ!ミサイル発射と聞いて祝杯をあげてる奴らがいる。

5)アメリカ様の意向に従っている
 今さら述べるまでもないですが、日本は独立国家ではなく、実質、アメリカの植民地です。理由については、下記リンク先の記事をご覧ください。

【憲法よりも上位にあるもの?】日本社会を支配する本当のシステムは何か?

【憲法を超える存在!】日米合同委員会という密室で日本国民の主権が奪われている。

 アメリカの指示なしには、国あり方ひとつ決められない日本。当然、防衛費をどうするかも自分では決められません。アメリカは日本を守るために日本に駐留しているのではなく、前線基地として利用しているだけです。年間数千億円という思いやり予算を日本側は米軍へ献上していますが、そんなもの義務ではないので拒否すればいいのですが、それすらできない日本。思いやり予算が無くなれば米国は日本から出ていかざるを得なくなりますが、それで日本側が困ることは何もありません。アメリカが望んでいるのは、不安定なアジア情勢であり、外交が上手くいっている安定したアジアでは困るのです。自国の軍需産業が干上がってしまうからです。

 その歴史の9割以上が戦争で血塗られてきたアメリカは、戦争無しでは成り立たない国です。そのアメリカから、欠陥品で使い物にならないオスプレーを法外な価格で多数買い取ること要求され唯々諾々と従う日本政府は本当に情けないですね。自民党自体がアメリカ政府の下部組織のようなものですから仕方ありません。防衛費を増額するという提案も、その延長線上にあります。アメリカ様の意向なのです。世界中で戦争をやり過ぎて、自国の社会システムが疲弊してしまったため、日本に費用負担を求めている訳です。愚か者との付き合いも程々にしなければなりません。対等な平和条約を結び、国の在り方について逆に日本が模範を示す位の気概を持った政治家に、日本の運営を任せたいと思います。

6)国民の生活がますます貧しくなる
 防衛費増額賛成者の中には、「敵国から自国を守らなければ何も始まらない」と言います。しかし、軍事予算に何百兆、何千兆円かけても、安心・安全な社会・暮らしを実現することはできません。今のアメリカが典型的です。逆に、不安定で危険で、常に不安に怯えながら暮らさねばならないような状況に陥っています。そんなアメリカの真似をする必要はありません。

 自民党は、防衛費を5兆円から10兆円に増やすことには抵抗がないのに、教育の無償化については「予算がない」と言い訳ばかりをします。安倍総理は自分の虚栄心を満たすために、何十兆円というお金を海外にばらまくことをためらいませんが、生活保護を受けざるを得ない庶民の苦悩には無関心です。

 自民党というアメリカの傀儡政党に一票を投じ続けていたら、日本国民の生活がますます貧しくなるだけだと思いませんか?

7)日本国憲法の理念からますます外れてしまう

「1.日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2.前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」

 戦前回帰願望が強い反動右翼政治家にとって、日本国憲法の九条は特に気に入らない部分でしょう。安倍晋三さんも、「みっともない憲法」と公言しているくらいです。しかし、政治家や官僚は、憲法の理念に沿ううように行動する義務があります。すぐには無理でも、戦力の不保持という理想をどのように実現したらいいか考えることが求められているのです。

「NATOの基準に合わせて軍事費を10兆円に増やすぜ!中国や北朝鮮とドンパチやらなきゃならないからな。」
この自民党安全保障調査会の提案は、憲法九条を完全に無視したものです。例えば、北朝鮮をならず者扱いしたがりますが、実際、北朝鮮と外交を行っていない国は世界の中でも少数派です。

朝鮮民主主義人民共和国と外交関係を有する国々の一覧図。緑色で塗られた諸国は朝鮮民主主義人民共和国と国交を有し、灰色の諸国は国交を有さない。赤色の国家は国交を断絶している。

 他の多くの国と同様、日本も、北朝鮮と話し合いの場を持つよう努力しなければなりません。ケンカ腰だけでは、自分の無能を証明しているに過ぎません。防衛費をなるべく少なく済ますにはどうすればいいか、知恵を絞るのが真の保守政治家の仕事です。安倍さんのご機嫌などは、どうでもいいことです。

関連記事リンク:
これを読めば、誰でも憲法九条に感謝せざるを得ないだろう。そういうスゴイ話を紹介します。

最後に:
 思いつくまま、安全保障調査会提言の問題点を7項目ほど挙げました。防衛費増額の雰囲気に流されず、皆さんも一緒に考えて頂ければと思います。

以上

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