【タックスヘイブン】富裕層の税逃れ問題まとめ

 いわゆるパナマ文書の流出・公開を通じて、富裕層がタックスヘイブン(法人税や所得税が低い国や地域)を悪用して租税回避を行っている実態が、徐々に知れ渡るようになってきました。下図は、租税回避の仕組みを解りやすく示したものです。

図(租税回避の仕組み)出典:朝日新聞

図(租税回避の仕組み)出典:朝日新聞

 富裕層や企業は複雑な経路を用いて、多額の資金をタックスヘイブンに移します。タックスヘイブンに集めたお金は隠し金庫に保管しているのと同じなので、日本の税務署は追跡できませんし、情報も開示されません。富裕層は日本国に対してほとんど税金を払わずに済むので、国は税収不足を補うために庶民など取りやすいところから取ろうとします。消費税の増税は典型例ですね。金持ちの税逃れのツケを庶民が払わされているのです。

 最近、パナマ文書流出が騒がれていますが、もっと昔の2013年8月25日、日本共産党の機関紙である赤旗がタックスヘイブン問題を調査・報道しました。そのとき報じられた内容を、以下に示します。

図(日本からケイマン諸島への投資残高推移) 出典:赤旗

図(日本からケイマン諸島への投資残高推移) 出典:赤旗

図(ケイマン諸島の位置) 出典:赤旗

図(ケイマン諸島の位置) 出典:赤旗

図(日本の主要50社のタックスヘイブン子会社) 出典:赤旗

図(日本の主要50社のタックスヘイブン子会社) 出典:赤旗

 日本の有名な大企業が、小賢しい悪知恵を使って税逃れをしている様子が良く分かります。しかし、このとき赤旗が調査発表したのはケイマン諸島に関係するもののうち一部だけであり、全世界の租税回避実態からみれば氷山の一角に過ぎません。調査分析能力抜群の日本共産党ですら、全体の実態を掴むことが出来ないのです。

 パナマやケイマン諸島以外にも、世界中には租税回避地(タックスヘイブン)がたくさんあります。

図(世界のタックスヘイブン)

図(世界のタックスヘイブン)

 租税回避されている資産は、全世界で数千兆円規模にもなります。公開されたパナマ文書はごく一部の情報ですが、名前が載っている企業の言い分を見てみましょう。

図(パナマ文書に名前が載った主な企業の言い分)

図(パナマ文書に名前が載った主な企業の言い分)

 社会的責任の意識が低い悪徳企業の見苦しい言い訳です。新自由主義経済に毒されて資本主義が暴走しているのです。

 以下に紹介するビデオは、公認会計士の深見浩一郎氏に対するインタビューです。深見氏は、「税金逃れの衝撃 国家を蝕む脱法者たち」の著者であり、租税回避問題をわかりやすく解説しています。オススメです。

 以上の情報をもとに、私なりのまとめを以下に箇条書きします。

・タックスヘイブンを利用した税逃れが可能なのは、法律の不備が原因である。国際協力による法整備が必要である。
・タックスヘイブンを利用した租税回避は現状、違法行為ではないが、間違った行動であり、異常な結果を引き起こしている。
・大企業は税金で整備された社会資本や人的資源を利用することにより儲けを得ている。にもかかわらず税金を納めないのは、タダ乗りしているのと同じである。
・「ルール内で株主利益を最大化するのは経営者の義務」などと尤もらしいことを述べ、租税回避を擁護する人間は、企業の社会的責任という観点を欠いた愚か者である。
・富める者の税逃れのツケを貧困層が払わされている。この理不尽な現実を直視せよ。
・貧富の格差を助長し、社会福祉の劣化・治安の悪化など、社会機能の低下を招いている。
・99%の人間が貧困化することで経済が停滞し、長い目で見れば富裕層の首を絞める結果につながる。
・今回流出したパナマ文書は公開されるべき情報のごく一部に過ぎない。
・租税回避されている資産は、全世界で数千兆円のレベルであることは間違いない。
・巨額の隠し資産に対して適正に課税すれば、我々庶民の税負担はかなり軽くなる。

結論:
 「パナマ文書」と聞いて、「地球の裏側で一部の金持ちが何かやっているな」「私には関係ない」などと捉えてはなりません。対岸の火事ではないのです。富裕層の租税回避は、国家の根幹を揺るがす大問題なのです。増税や保険料・公共料金値上げなどで生活が苦しいと感じている人は皆、被害者です。当事者なのです。富裕層の権益保護のためにダンマリを決め込む政府やマスコミは我々の敵である、という意識を持つべきです。

写真(パナマ文書を調査しないと発言する菅官房長官)

写真(パナマ文書を調査しないと発言する菅官房長官)

写真(民進党のパナマ文書調査チーム) 出典:日刊ゲンダイ

写真(民進党のパナマ文書調査チーム) 出典:日刊ゲンダイ

以上

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