2017年6月15日、与党の賛成多数により共謀罪法が成立した。まるで気が狂わんばかりの、常軌を免した前代未聞の強引さであった。野党の質問権を奪ったばかりか、委員会での採決すら省略したのである。投票時に、「この国に生きる人々を潜在的犯罪者として扱うのか!恥を知れ!」と山本太郎議員は叫んだが、当然である。
安倍総理は、これで国会が閉会してヤレヤレと思っているのかもしれないが、海外のメディアはどのように評価しているのだろうか?国際情勢の報道で特に定評があるというスイスの最重要紙「新チューリヒ新聞」が、「共謀罪法強行採決」に関する記事を書いた。その日本語訳を以下に紹介する。参考にして頂きたい。
転載始め(邦訳:Ayaka Löschkeさん)
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◆「日本での抗議運動:異論の多い共謀罪法」
(Proteste in Japan: Umstrittenes Gesetz gegen Verschwörungen)
Patrick Welterによる東京からの報告(2017年6月15日)
日本が重大な犯罪行為の計画を犯罪として刑罰を課すことになった。政府は、そのことを可能にする法律を強引に国会で通した(durchs Parlament gepeitscht)。野党は思想の自由が脅かされていると見ている。
野党やデモ参加者たちの猛烈な抗議にも拘わらず、日本の保守的な政府は木曜の朝、組織犯罪とテロを取り締まる法律を強引に国会で通過させたのだ。安倍晋三は、2020年の東京オリンピックの際の安全を保証するために必要なのだと強調した。
それに対して、野党や評論家たちは、日本が監視国家になるのではないかと警告している。民進党党首・村田蓮舫は、思想の自由を制限する容赦のない(brutal)法律だと語った。この法律によって、組織的な犯罪集団による重大犯罪は、その計画(Planung)だけでも既に監視され、罰せられ得る。これにより、日本は「犯罪は、犯罪行為がなされた後で初めて罰せられ得る」という原則(Prinzip)からは隔たっていくことになる。
何千もの日本人が国会の前で、この法律に反対するデモに参加した。通称「テロ対策法案」は、「重大犯罪」の対象が277もあり、異例なほど(ungewöhnlich)対象を広く解釈している(fassen)がゆえ、弁護士連盟からも批判されている。そこには、居住用の建物の建設に反対してデモをするための座りこみのストライキや、音楽の違法コピーも含まれている。
◆[法律の広大な適用範囲(Ausgedehnte Anwendung)]
国連の特別報告者は既に5月、「(277もの対象の)多くの場合において、組織犯罪への関連がはっきりと分かるものではない」と非難した。ジョセフ・ケナタッチ(Joseph Cannataci)は、「日本は、この法律のせいで、プライヴェートな領域を侵害されない権利や、言論の自由の権利が不当に(ungebührlich)制限される危険を冒すことになる」と批判したのだ。彼は木曜、日本人の諸々の自由権を守るためのさらなる保護条項(Schutzklauseln, 注:国がいかにして国民の自由権を守るのかを記した約束条項)をこの法律に盛り込むよう促した。日本において、この法律の賛成者と反対者の数は、世論調査によると、ほぼ同数で釣り合っている。政府は、「国際的な組織犯罪と戦うための国連の協定を、日本がついに批准できるようにするため、この法律は必要だ」と主張している。
国会の会期末を目前に控えた数日間、政府はこの法律を大急ぎで(in grosser Eile)国会を通過させた。非常に稀に用いられるやり方で、政府は水曜、すぐに本会議での審議を始めるために、参議院の専門委員会での採決を断念した。木曜の早朝、法案が採決されるに至った。政府は、離れ業(Verfahrenstrick)でもって、国会の会期延長と、野党からの不快な質問に答えることを回避したのだ。
◆[疑惑の只中にある首相(Regierungschef im Zwielicht)]
安倍首相は、彼の友人の一人が大学の学部を新設する際に特別扱いされた(begünstigt werden)と言われているがゆえに、重圧にさらされている。文科省は木曜、政府の上層部からの圧力があり得たことを指し示す文書を見つけたことを認めた。文科省はそれまで、「そうした文書の存在は確認され得ない」と説明していた。国会の会期を延長せずに、国会を閉会させることでもって、政府はいまや、質疑の時間において、このスキャンダルを公の場で効果的に問題とする機会を、野党から奪ったのだ。
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転載終わり
元記事のリンク:
Umstrittenes Gesetz gegen Verschwörungen
以上