はじめに:
国際化の時代と言われて久しいですが、ほとんどの日本人は英語と無縁の生活を送っています。
おそらく、95%以上の日本人は中学・高校以来、英語から遠ざかり、基本的な英文法や英単語も忘れていることでしょう。
しかし実際、何千何万という日本の会社はグローバルな国際取引を毎日行い、ビジネスを成り立たせています。
なぜ国際ビジネスが成り立つのか?
それは、日本人と外国人との間に入って意思の疎通を助ける人たちがいるからです。
私も日本国内のメーカー社員として、英語を使った意思疎通サポート業務に邁進しています。
実は今の会社に入社してから約30年間、研究開発系の仕事をしてきたのですが、最近、調達部署に異動し、仕入れ先をインドに拡大する戦略を担うことになったのです。
この記事では、そんな私のビジネス英語体験記を紹介いたします。
TOEICスコアの重要性と向上法:
就職や昇進で重要視されつつあるTOEICですが、英語ビジネスを進めるうえでスコアが高いに越したことはありません。
TOEICスコアが高いということは、文法、英単語、リスニング、リーディングといった基礎力が身に付いていることを示します。
基礎力が高いほど、その後の英語実践力も高くなる可能性が高いです。
また、TOEICのハイスコアは、新しい英語業務に挑戦するときの心理的障壁も低くしてくれます。
「まあ、とりあえずやってみるか・・」という軽い気持ちで実行に移せるのは、TOEICのハイスコアに裏打ちされた自信のなせる業といえます。
だから、どの企業もTOEICの点数を気にしているのです。
実際、TOEICの対策問題集に載っている表現は100%ビジネスでも使えるものですし、覚えれば覚えるほど実力が付きます。
私は2020年にTOEICで940点を取りました。
英語でビジネスを進めるために、ここまで高得点を取る必要はありませんが、点数自体は高いに越したことはありません。
では、私自身がどのようにして英語を勉強してきたのか?
そのプロセスや勉強法、リソースの活用方法などについて、興味がある人は下記リンク先の記事を参考にして下さい。
通訳者としての取り組み:
当たり前のことですが、TOEICの点数を上げる勉強をすれば、自然と通訳業務ができるようになる訳ではありません。
通訳の仕事は別途、勉強が必要です。
通訳という仕事は日本語と英語を行き来する必要があり、英語業務の中では最難度といえます。
実際、通訳者訓練学校の門を叩くには、最低でもTOEICで860点は求められます。
私自身、通訳の資格は持っていませんし、学校で習ったこともありません。
すべて独学です。
リスニングは、TOEICのような綺麗な発音ならOKなのですが、実践では苦労しました。
特に、インド人は独特の訛りがあるので聞き取りが大変です。
しかし幸い、GoogleMeetなどのオンライン会議なら、音声を自動的に字幕化する機能があるので、その文字情報にかなり助けられています。
また、日本人スタッフの日本語コメントを英語に訳して発音し、インド人に伝えるのもかなりの技能を要します。
「ではそういうことで、一つよろしくお願いいたします」みたいな曖昧な日本語の真意を理解し、最適な英語表現に短時間で変換するプロセスは、高度な技能です。
私は、以下の文献を使って繰り返し練習しました。
「同時通訳が頭の中で一瞬でやっている英訳術リプロセシング」(田村智子著)三修社
私は幸い社員ですので、同じ部署内の背景業務知識は持っています。
しかし、会議のアジェンダを元に、具体的にどんな日本語コメントや質問が出てくるか想定して、それらに対応する英語表現の引き出しを増やしておくことは必須です。
臨機応変さが求められる通訳業務では、準備がすべてだと思います。
今の部署でまともな英語力を持っているのも通訳ができるのも私一人ですが、所詮は脇役。
他の主役たちの足を引っ張らないように、日々精進に励んでいるところです。
翻訳業務の経験:
グーグル翻訳や生成AIの進歩により、英語を日本語に訳すときの精度はかなり良くなっています。
ですから、よほど難しい文章でない限り、英文和訳の依頼が来ることはありません。
依頼が多いのは、やはり和文英訳ですね。
取説、手順書類、問い合わせメールの作成など、社内の和訳ニーズは多岐に渡ります。
非論理的で雑に書き殴った日本文が氾濫しているのが実情であり、それらの真意をくみ取り、論理的に組み立てなおし、相応しい英語表現に変換する作業は一筋縄では行きません。
英訳する以前に、日本語と格闘しなければならないのです。
私が参考にした文献の中で代表的なものは以下です。
「英語ロジカル・ライティング講座」ケリー伊藤著(研究社)
また、その業界や仕事で用いる特有の単語や表現があるので、それらをマスターするのは必須です。
ライティングは数をこなせば、だんだんと早く正確にできるようになります。
表現がマンネリになってきた場合、ChatGptを使うと、色んな英訳例を提示してくれるので、表現の幅を広げるのに役立ちます。実際、私も重宝しています。
それにしても、最近の生成AIの進歩は凄まじい。
下記二つのリンク先記事は、同じ記事の日本語版と英語版ですが、英訳版を作成するときは、ChatGptを使いました。
念入りにチェックしたのですが、修正部分がほとんど見つからないくらいの出来でした。
よろしければ参考にしてください。
日本の会社において、職場スタッフの英語運用力が上がらない理由
Why English proficiency remains low in Japanese companies ?
オンライン会議のポイント:
国際ビジネスを進めるうえで、オンライン会議は無くてはならないものになりました。
日本国内であれば、お互い訪問し合って直接会って打合せすることも容易です。
しかし、相手がインドの会社だと出張するのも大変なので、どうしてもオンライン会議に頼ることになります。
お互いの顔を見て声を聴いて定期的に会議を重ねていくと、信頼関係が高まり、情報のやり取りもスムーズに行くようになります。
海外とのオンライン会議と言っても、基本的な進め方は日本国内と同じです。
ただし、私にとって国際会議は初めてだったので、どのような表現を使えば良いか、YouTubeなどの素材を用いて確認しました。
準備としては、アジェンダとそれに沿ったセリフ内容の作成・確認(日英)が必要です。
また、それぞれのアジェンダごとに質疑応答があるので、相手のインド人と臨機応変に英語で会話することになります。
インド人の発言中は、他の日本人スタッフはGoogleMeetの自動字幕生成翻訳機能を使って内容を理解することが可能です。
スクリーン上で字幕を日本語で表示してくれるので、英語力が低くてもリアルタイムで内容を理解できるのは大きなメリットです。
通訳としての私の負担も軽減され、とても助かっています。
ただし、日本人スタッフの日本語発言を英訳して伝える機能は今のところないので、それは私の方で行っています。
前述「通訳者としての取り組み」でも書きましたが、これはかなり高度な技量を要します。
英語だけ使って会話する場合と比べて、10倍くらい疲れます。
でもまあ、「訊きたいことが伝えられた。おかげで有用な情報を引き出せた」と感謝された時は、嬉しいものです。
ちなみに、インドは日本よりも3時間半遅れているので、会議時間は日本の午後からです(インドが10時開始なら日本は13時30分)。
また、インド人は日本人と比べてランチタイムが遅い(13時以降)ので、インド時間で12時から会議を設定しても文句は言われません。
効果的なビジネスメールの書き方:
基本的な考え方は、上記「翻訳業務の経験」と同じです。
TOEIC対策をされたことがある人なら、ビジネスメールの文例を見たことがあると思います。
また、ChatGptを使えば、典型的な文例をあっと言う間に書いてくれます。
まあ、最終的なチェックは送信者本人がやらねばなりませんが、英会話と比べてハードルは低いです。
基本的には自分のペースで書けるのですから。
また、ビジネスメールはフォーマットにしろ内容にしろ繰り返し使うことが多いので、ほとんど過去例の流用で済むことも多いです。
メンバーの英語運用力向上サポート:
インド国内の取引先や業務量が増えれば、英語サポート業務も増えていきます。
私一人ですべてを担うのは無理なので、他メンバーの英語運用力をアップするための施策を打つことにしました。
皆大卒ですが、TOEICは300~400程度の初心者レベル。
しかし、幸いにもビジネス英語は雑談と異なり、場面やセリフがある程度予測できるので、準備が可能です。
会議中に想定されるセリフを日英で書いてもらい、事前に発声練習をしてGoogle翻訳で判別可能かチェックしてもらっています。
そして実際に会議で喋ってもらい、それが相手のインド人に伝われば、その経験は永遠に忘れません。
「私の英語が伝わった。私でもできる」と感じてもらえばOK。
それをきっかけとして、どんどん対応可能範囲を広げていけばいいのです。
台本に無い想定外の英会話を臨機応変に行うのは敷居が高いですが、まずは、自分に足りないものが何なのか明確に認識するところから始めるべきだと思います。
英文法、語彙、リスニング、発音など、自分にとっての課題は何か?
それは、自分が当事者になって実践して、困ってみて、初めてわかることなのです。
最後に:
日本人にとって英語は、もっとも学習しにくい言語のうちの一つでしょう。
言語構造、発音、表記方法・・・
どれをとっても異質ですし、みんなが英語を避けるのも無理はありません。
正直、日本人が英語を扱うこと自体がリスクだと思います。
その英語を使って、外国とのコミュニケーションを促進するのは高度な技術だと思います。
ですから、通訳や翻訳家としてビジネス業務に携わるのは誇らしいことですが、あくまで縁の下の力持ちだということは忘れないようにしたいです。
会議中、外国の大企業重役と直接交渉しているように見えても、実際はシナリオライターの目論見通りに進めているに過ぎません。
つまり私は脇役なのですが、英語を使ってコミュニケーションのサポート業務ができるのは強みでもあります。
皆が出来ない、やりたがらない、勉強したくない英語が扱えれば、差別化につながります。
生存戦略の一環、リスキリングとして英語学習はオススメです。
この記事が、英語学習や国際ビジネスを進めるうえで何かしらお役に立てば幸いです。
以上