トランプ氏が分別のない傍若無人発言を続けるならば、アメリカに対する投資は減ることになるだろう

写真(初めての記者会見に臨むトランプ次期大統領)

 ツイートでの一方的なメッセージ配信は出来るが、記者会見での気に入らない質問には露骨に嫌な顔をするトランプ米次期大統領。その傍若無人ぶりは、日本の安倍晋三氏や橋下徹氏を彷彿とさせる。

 そのトランプ氏が、トヨタ自動車の企業活動に注文を付けている。トヨタがメキシコに建設予定の自動車組み立て工場からアメリカに輸出される場合は、高い関税をかけると公言したのだ。政治家が、特定業界の特定企業の活動に口を出すのは異例のことだ。

 トヨタのようにグローバルに活動する巨大企業は、コスト削減のために世界中のどこでどのような活動をすればいいか常に知恵を絞っている。コスト削減活動の度が過ぎて弊害が生じないように必要な規制をしたり、利益に対して応分の負担をしてもらうことはもちろん大切だ。しかし、少なくとも現状のルールを遵守した上で企業活動をしているのであれば非難されるべきではない。自動車産業は北米自由貿易協定に基づき、人件費の安いメキシコに工場を建設し、関税ゼロでアメリカへ輸出しているに過ぎない。

 トランプ氏のトヨタへの脅しは、明らかな越権行為であり、ルール違反である。オバマ政権の8年間でアメリカでの貧富の格差が拡大し、安心して暮らせる社会ではなくなったことは確かだが、雇用の創出をアメリカ国民に訴えるために、思い付きの人気取り発言をしてはいけない。トヨタも日本政府も毅然とした対応をすべきだ。

 トランプ氏は自分の発言や行動に責任を取れる人間なのだろうか?彼が本当に保護主義の政策をとりたいならば、貿易のルールを変更することから取り組むべきだ。独裁者気取りで特定産業・特定企業を攻撃するのはルール違反である。

 日本の自動車メーカー(トヨタ・日産・ホンダ・マツダ)は2015年度にメキシコで135万台の車を生産しており、しかもアメリカは巨大な市場である。自動車メーカーがトランプ氏の発言にとても神経質になるのは無理もない。

 トヨタは過去60年以上の間に220億ドルの投資を米国内でしており、10棟の工場と1500か所の営業所を立ち上げ、13万6000人の雇用を生み出している。2015年だけで16万台以上の車をアメリカから輸出している。しかも、今後5年間で100億ドルの投資を行うと発表しているのである。しかし、トランプ氏が分別のない傍若無人発言を繰り返すならば、今後は、アメリカに対する投資を躊躇せざるを得なくなるだろう。

 トランプ氏の態度が改まらない限り、今後の情勢は不透明である。アメリカはルールを軽視する国だと見なされれば、その社会は不安定で予測不能だと判断される。どの国のどの企業であっても、そんなところで本腰を入れてビジネスをする気にはなれないだろう。結果として、アメリカ国内で多くの雇用が失われる可能性がある。

 初めての記者会見で、冷静さを欠き傍若無人な振る舞いが目立ったトランプ次期米大統領だが、今後の発言や行動を注視する必要がある。

参考リンク:
Trump meddling in Toyota’s affairs

以上

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