ニューヨークタイムズが従軍慰安婦問題を報道:「韓国の追加謝罪要求を安倍首相が拒否」

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 「従軍慰安婦」というゴマカシ表現が定着しているが、戦時中の旧日本軍による性奴隷強制は人類に対する犯罪であり、悪魔の所業である。しかし、日本人は学校で加害者としての歴史を学ばないので、旧日本軍による性奴隷強制を韓国側からの言いがかりと受け止め、ヒステリックに反論するのみだ。だが、世界の論調はもう少し冷静だ。ニューヨークタイムズがこの件に関して、2018年1月12日付記事で報道した。当該記事のリンクを以下に貼る。

Japan Balks at Calls for New Apology to South Korea Over ‘Comfort Women’

 以下にニューヨークタイムズ記事の要旨を述べる。

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出典:ニューヨークタイムズ

 歴史問題については、日韓が和解することはなさそうだ。

 旧日本軍による性奴隷被害者に関する2015年の日韓合意を反故にする気はないと韓国は述べたが、心からの謝罪を日本側に求めた。しかし、安倍総理は、追加的な要求は到底受け入れられないとして、拒否した。

 性奴隷問題が原因で、日韓両国は長い間対立してきた。「歴史の歪曲だ」「歴史の改ざんだ」お互いに罵り合ってきたのだが、それが再燃した格好だ。

 2015年の日韓合意は、「最終的、かつ、不可逆的な合意」とされ、日本政府の謝罪と10億円の基金提供が含まれていた。しかし、被害者たちの要求は、日本が法的な責任を認めて正式に賠償金を支払うということだ。日韓合意は被害者たちの気持ちが無視されているため、韓国内で猛反発が起き、後任の大統領は見直しを約束した。

 韓国側は、被害者に対する心のこもった誠意ある謝罪、および、再発防止への取り組みを求めている。しかし、安倍総理は追加の謝罪を拒否した。さらに、韓国で行われる冬季オリンピック開会式への参加ボイコットを示唆した。総理官邸は、1月22日から始まる国会日程を理由に挙げたが、安倍総理は2014年のソチオリンピックでは、国会を欠席して開会式に参加している。

 日本のマスメディアのほとんどは、安倍総理の態度・発言を支持している。「河野談話以来、繰り返し謝罪してきたじゃないか!」「また蒸し返す気か?」と言う者もいる。安倍総理自身は、性奴隷強制の事実自体を疑っている。

 「人権侵害案件なのだから、被害者の声を聞かずに解決は有り得ない。謝罪が本物か、賠償が十分かは被害者側が決めることだ。」(上智大学の中野教授)

 「従軍慰安婦の論争は脇に置いて、安全保障での協力や当面の課題に注力すべきだ」「2015年の日韓合意は、過去を忘れようという意味ではない」(日本の元外交官)
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 以上が、ニューヨークタイムズの記事要旨だ。日本国内のヒステリックな安倍忖度報道よりは、だいぶ冷静に感じる。

 歴史を学ぶ際は、被害者してだけでなく、加害者の視点も重要である。過ちを繰り返さないためにも、事実から目を背けてはならない。歴史の改ざん・歪曲・隠蔽は最低の人間がすることだ。

「慰安婦問題は10億円払ってチャラにするって決めただろ。それを反故にするなんて許せねえ。平昌五輪開会式への出席はナシだ!」

 これが、加害者側のとるべき態度だろうか?非常識な安倍総理の態度は、日本国民の意識の反映でもある。反動極右の首相を支持する国民自身が、世界に対して恥をさらしているのだ。

 参考までに、次の記事も合わせて読んでいただけたらと思う。

加害者としての記録が必要なのはナゼか?歴史改ざんは高くつく。

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加害者としての記録が必要なのはナゼか?歴史改ざんは高くつく。

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 アメリカ軍による東京大空襲や広島・長崎原爆投下という大量虐殺を犯罪として長く記録に残し、歴史的事実として後世に伝えていくことに反対する人はいないだろう。アメリカ側は、「原爆による死者はそんなに多くない」「原爆を投下したおかげで早く戦争が終わり、結果的に多くの人命を救った」などと見苦しい言い訳をしているが、まともに耳を傾けるのは一部の売国奴政治家くらいなものだ(主に自民党)。

 しかし、日本人が被害者ではなく加害者として関わった事柄が話題になると、途端に様相が変わる。旧日本軍の中国侵略行為の事実を、本多勝一氏が中国側から聞き取り実地調査を行い報告した下記著書はあまりにも有名だ。強姦・虐殺、略奪、放火・・・ 我々の周囲にいるごく普通の日本人が、侵略行為に加担した結果、悪魔に変わってしまった事例である。

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 1971年の8~12月にかけて朝日新聞に掲載されたものを単行本としてまとめたもので、当時、大反響が起こった。どんな文章であれ、支持する人もいれば拒絶反応を示す人もいる。「よくぞやってくれた!」と支持する人の中には、戦争体験がある旧日本軍兵士が意外にも多かったという。

 ネトウヨ的な拒絶反応の例を以下に記す。

「国賊朝日新聞!」
「中国側のねつ造だ!買収されたのか?」
「でたらめだ!嘘を書くな!」
「この売国奴め!」
「悪いのは中国だ!」
「必ず天誅を加えてやるから覚悟しろ!」
「お前の家族は死に絶える!」

 これらの反応は予想通りなので参考にならない。参考になるのは、まじめな読者による真面目な反応だったと著者の本多勝一氏は述べている。

 明治から今日まで、国家権力が総力を傾けて実施してきた皇国史観教育は、問題意識を持てない奴隷的パーソナリティを育むのに役立ってきた。ブラック企業の跋扈、世界的にも稀な過労死の頻発、庶民から搾取して富める者に分配し続けても選挙で圧勝を続ける自民党、選挙での異常な棄権率の高さ、人間平等の思想を踏み潰す天皇礼賛、原発安全・安心神話の盲信・・・ 例を挙げればキリがない。根底にあるのは、「上の人たちは間違いを起こさない。言われたとおりにしていれば問題ない」という根拠なき信頼だ。自発的隷従という言葉でも表現できる。

 骨の髄まで権力の奴隷になって生きている人たちから見れば、権力側の犯罪を指摘する声は鬱陶しいに違いない。自分の考え方、感じ方、生きる姿勢、さらには自分の人生そのものを否定されているように感じてしまうのだろう。民主主義と対極の安易な姿勢に流されてきた人々は、権力への盲従以外に選択肢はないと信じ込んでいるのである。そんな亡国的な宗教に頼らないで、早いところ精神的に自立した方がいいのだが、どうしても出来ない。こういった「真面目な」人々の反論と、それに対する反論を以下に紹介する。

・「中には善良な日本兵もいた」
 大量の日本軍を中国本土に送り込み、財閥を太らせるための収奪を行い、その過程で千数百万人という中国人を殺害した事実は揺らぐことはない。文部科学省も認めていることだ。このような情況下で、一部の善良な日本兵の存在を持ち出しても意味がない。

・「中国軍だって日本人を虐殺した。」
 盧溝橋事件から間もない混乱時に、二百数十人の在留邦人が蒋介石軍によって虐殺された。非道な許されざる行為だ。だからといって、旧日本軍による中国全土への凶暴な侵略行為が正当化されるのか?すべての原因は、日本による侵略行為なのだ。

・「中国側の視点による一方的な報道だ。公平に報道しろ」
 日清戦争以来、権力の広報誌である新聞は権力側に都合の良いことしか報じてこなかった。日本軍の侵略を自衛と言い換え、中国の反撃を非道・鬼畜と宣伝していた。その一方で、日本軍の残虐行為は何一つ書いておらず、隠蔽してきたのだ。戦後二十数年経ち、ようやく中国側の視点で報道することが、どうして偏向なのか?むしろ、偏向を正す行為ではないか。日本の侵略行為の一切を隠蔽しろ!、という態度こそが偏向である。

・「中国人の証言なんて不正確だ」
 侵略した場所へ行き、現地の体験者の声に直接耳を傾けるのは、正確な情報を得るのに一番有効な方法だ。侵略側は侵略された側の発言に関して揚げ足取りを行い、「自分と主張が異なる「だから侵略事実はなかった」「すべてマボロシだ」「だから、旧日本軍は何も悪くない」という詭弁術を侵略側は良く用いる。それしか頼りになる方法がないのだろう。

・「戦争なんだから、異常事態なんだから仕方がない」
 そもそも、日本が中国に攻め込まなかったら戦争は起こらなかったのである。戦争を起こした側が、「戦争なんだから仕方がない」とよく言えたものだ。「侵略されても大人しく従っていればいいものを、抵抗するから戦争になるのだ。戦争になったのは中国が原因だ」とでも言いたいのか?この間抜けな論理にダマされる人は、現代の日本人にも多い。

・「こんな報道をするなんて、お前は日本人か?」
 「在日認定」という言葉がネトウヨの間で流行っているが、権力側に都合の悪いことを発言する者は日本人ではないということだ。日本人ならば皆で協力して、憎き中国を打倒しようと言いたいのだろう。日本国民全員が仮想敵国を批判してさえすれば、自国の悪政が批判されることもなく、内閣支持率は高止まりしたままで権力側は万々歳なのである。
 日本の庶民と中国の庶民は親密に交流し、協力関係を構築し、お互いの国の権力者たちを監視し暴走を防がねばならない。協力すべきお互いの国民同士が分断されたままでは、権力者の高笑いが終わることはないだろう。

 以上述べてきたように、自国の侵略行為事実に対する反応は、権力者に都合の良いトンチンカンなものばかりだ。原因は、知るべきことを知らない無知にある。長年に渡って、侵略戦争の事実を教えてこなかった亡国歴史教育の成果である。

 歴史の改ざんや隠蔽は高くつく。とくに、自国の過ちに関することは正しく記録し、世代を超えて丁寧に伝えていかねばならない。同じ過ちを繰り返さないためにも、絶対に必要なことだ。事実に対して目をつむれば、実害は必ずあなたに降りかかってくる。普通の一般人が強姦虐殺魔に変貌するのはフィクションの世界だけではないのだ。

政治家による靖国神社集団参拝(2017年)出典:朝日新聞

参考文献:
本多勝一・長沼節夫著「天皇の軍隊」(朝日文庫)の初版解説文「加害者としての記録の必要性」

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サンフランシスコとの姉妹都市解消を表明した大阪市:吉村市長は賢明といえるのか?

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 旧日本軍がアジア諸国で犯した無数の犯罪の一つに、性奴隷によって多くの女性の人権を蹂躙したことが挙げられる。事実を隠ぺいする慰安婦という言葉で語られるのが普通だ。この問題を象徴する少女像がアメリカのサンフランシスコ市に寄贈された。サンフランシスコ市が正式に少女像を受け入れたことを受け、大阪市の吉村市長は「信頼関係は消滅した」とするコメントを発表し、姉妹都市を解消する考えを示した。

 自分の気に入らない相手とは絶交だという態度は、極めて幼稚だ。しかし、吉村市長の発言はほとんどの日本人から支持されていると思う。そればかりか、「従軍慰安婦は売春婦だ」とコメントし被害者を侮辱する者も多い。そんな事実は一切ないと否定する人もいる。しかし、日本政府は性奴隷犯罪(=従軍慰安婦問題)の事実を正式に認めている。1993年8月4日に発表された河野内閣官房長官談話を以下に引用する。

引用始め
*******************
 いわゆる従軍慰安婦問題については、政府は、一昨年12月より、調査を進めて来たが、今般その結果がまとまったので発表することとした。

 今次調査の結果、長期に、かつ広範な地域にわたって慰安所が設置され、数多くの慰安婦が存在したことが認められた。慰安所は、当時の軍当局の要請により設営されたものであり、慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した。慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった。

 なお、戦地に移送された慰安婦の出身地については、日本を別とすれば、朝鮮半島が大きな比重を占めていたが、当時の朝鮮半島は我が国の統治下にあり、その募集、移送、管理等も、甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して行われた。

 いずれにしても、本件は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である。政府は、この機会に、改めて、その出身地のいかんを問わず、いわゆる従軍慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての方々に対し心からお詫びと反省の気持ちを申し上げる。また、そのような気持ちを我が国としてどのように表すかということについては、有識者のご意見なども徴しつつ、今後とも真剣に検討すべきものと考える。

 われわれはこのような歴史の真実を回避することなく、むしろこれを歴史の教訓として直視していきたい。われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する。

 なお、本問題については、本邦において訴訟が提起されており、また、国際的にも関心が寄せられており、政府としても、今後とも、民間の研究を含め、十分に関心を払って参りたい。
*******************
引用終わり

 河野談話を苦々しく思っている日本人は多いが、この政府の公式見解は外務省のホームページにも掲載されており、世界中に向けて発信されたものだ。抽象的な表現ばかりで具体的な犯罪イメージを描きにくいが、正式に認めた事実は重い。

 もっと生々しい生き証人もいる。自民党の中曽根康弘元首相だ。戦時中は官僚(海軍主計大尉=金の使い方を決めれる強い権限を持つ)だった彼は、強姦や博打、喧嘩する兵隊をうまく統制するために自ら慰安所を作ったと証言している。

写真(中曽根康弘元首相の慰安所設置証言)

 自民党の補完勢力である大阪維新の会に属する吉村市長は、中曽根康弘元首相自身の証言も捏造だと言って否定するのだろうか?

 被害を受けた国の団体が、歴史的事実の風化を恐れて何らかの手を打とうとするのは当然だ。特に近年の日本政府は積極的に加害事実の隠ぺいを行い、歴史改竄を積極的に進めているので、このまま傍観していたら同じ間違いを繰り返す可能性があると思われているのだ。日本への不信感が世界中で渦巻いている以上、日本が批判され続けるのは当たり前である。

 大阪市の吉村市長には、サンフランシスコ市への不信感を表明する資格はない。サンフランシスコ市との信頼関係をぶち壊したのは、事実を直視する勇気がない吉村市長自身である。

 加害者としての歴史を学ぶことがない日本の歴史教育では、独善的な反動右翼思想に染まった多くの若者を大量生産している。長年の歴史改竄教育が功を奏し、もはや日本全体がネトウヨ体質になってしまった。思考力がゼロで、過去の過ちからも学べず、同じ失敗を繰り返すという悲しい副産物が成果である。国民が選んだ愚かな政治家たちの暴言・妄言は、世界中の人々によって嘲笑されている。日本人の多くが気付いていないのは、情報鎖国のせいである。

 歴史を考えるときは、加害者としての視点が重要だ。旧日本軍がアジア諸国で行った無数の戦争犯罪のうち、性奴隷問題は一つの例に過ぎない。中国だけでも千数百万人が殺されたという事実をほとんどの日本人は知らない。若い時に知らされなければ、問題意識など持ちようがあるまい。「ネトウヨは教育の失敗」とはそういう意味でもある。

 歴史の教科書は権力者にとって都合の良い事実の羅列であり、都合の悪い事実は隠される。日本では特にその傾向が強い。しかし、あきらめる必要はない。おすすめの参考書籍を以下に紹介する。

 以下は、旧日本軍に侵略された側の中国人から直接聞き取りを行ったものだ。

中国の旅 (本多勝一集)

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 以下は、侵略した側の旧日本軍兵士たちの証言を元に編集されたものだ。我々と同じごく普通の国民が、軍隊組織に取り込まれた後、強姦魔・殺人鬼・放火魔・略奪者に変貌する様子が生々しい。

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 南京大虐殺という言葉は有名だ。以下の書籍を読めば、大虐殺は南京市内だけで行われたのではなく、旧日本軍が南京へ向かう道そのものが大虐殺の現場だった、ということが分かる。

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 旧日本軍という侵略者たちは、見つけた女性を片っ端から強姦し、その後、殺したのだ。これは、侵略軍の本質と言える。その陰で暴利を貪って蓄財に励んだ財閥は万死に値する。

 このような事実を直視する勇気がない大阪市の吉村市長に政治家を名乗る資格は無い。発言を撤回し、謝罪し、おとなしく辞職されるがよい。また、このような愚か者を市長に選んでしまった大阪市民も、世界に恥をさらした責任の一端を負わねばならない。

以上

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あなたの周りで起こっているインパール作戦は何ですか?

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 太平洋戦争で最も無謀といわれているインパール作戦。無能な上層部が何万人もの日本兵を餓死させたことで有名です。

 補給もなく、非現実的な精神論で多数の兵隊を殺した上層部は、戦後、責任を問われることもなく、恩給をもらいながらノウノウと暮らして大往生を遂げたといいます。消耗品として虫けらのように扱われた兵隊たちは、さぞかし無念だったことでしょう。しかも、遺骨は今でもほとんどが放置されたままです。

 旧日本軍という組織のダメさ加減は言うまでもないことですが、戦時中のことだと割り切って良いのでしょうか?インパール作戦的なものを強要する組織や人間、それに唯々諾々と従う大人しい子羊という構図は、現代日本の至ることろで見られるのではないでしょうか?

 歴史を学ぶ目的は、過去の失敗事例・原因を学び、同じ過ちを繰り返さないことです。現代のインパール作戦を許さないためにも、他人事であってはなりません。下記のツイッター投稿を参考にしながら、皆さんも一緒に考えてみてください。

以上

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産経新聞の正しい読み方を教えます。

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 安倍政権の広報誌として名高い産経新聞が、2017年8月16日付で次のようなタイトルの記事を掲載しました。

戦後72年の靖国、いったい誰に「申し訳ない」のか 首相も閣僚も直接参拝せず

 産経新聞は購読者数が凋落傾向にあるとはいえ、ヤフーなどウェブ上で影響力が強く、20代、30代の若者は日々洗脳され続けています。問題意識の少ない年配の保守層も、そのほとんどが産経新聞の主張に同調しています。しかし、反動極右的な「思想」を日々刷り込まれ続けるのは危険です。戦前の悲劇を再び繰り返す原因になるからです。

 以下、当該産経記事を引用しつつ、それへの反論を試みます。

産経記事引用
「戦後72年の終戦の日、靖国の杜(もり)には雨にもかかわらず、多くの参拝者が訪れた。国に命をささげた人々の御霊(みたま)に改めて哀悼の意を表したい。」

→情感たっぷりの表現に負けてはいけません。国に命をささげた、というのは事実に反します。赤紙でイヤイヤ徴兵されたのです。その場の空気を読み、仕方なく戦地に赴いたのです。戦死者のほとんどは餓死であり、上層部から見捨てられたのです。特攻隊員は死を強制された人たちです。日本というシステムによる大量虐殺だったのです。国のためを思って命をささげたなどと美化してはいけません。

参考記事リンク:
「神風」から「kamikaze」という英語が生まれたのはナゼか?

産経記事引用
「東京・九段の靖国神社は、わが国の戦没者追悼の中心施設である。幕末以降、国に殉じた246万余柱の御霊がまつられている。うち213万余柱は先の大戦の戦没者だ。終戦の日に参拝する意義は大きい。」

→参拝を推奨するもっともらしい言葉にダマされてはいけません。宗教法人である靖国神社の基本的立場は、同じ敷地内の遊就館で示されています。要点を分かりやすく述べると、次のようになります。

「天皇の軍隊が行ったのは自衛のための戦争であり、侵略戦争では断じてない。日本軍の行動を邪魔する者は皆テロリストだ。我々は何も悪いことはしていないので謝罪する必要はない。」

 歴史的事実を知らず問題意識もない日本人にとっては耳に心地よいかもしれません。しかし、実際に侵略され殺された側の諸外国はこんな施設の存在を絶対に許しません。内閣の最高責任者である総理大臣がそんな場所へ度々参拝している訳ですから、外交関係が壊れてしまうのは当然です。A級戦犯が合祀されて以降は、天皇陛下も参拝をやめています。

詳しくは、下記リンク先記事を参照してください。

「政治家が靖国神社を参拝してはいけないのはナゼか?」

産経記事引用
「靖国は静かな追悼の場である。その国の伝統文化に従い戦没者の霊をまつり、祈りをささげることはどの国も行っていることだ。」

→産経新聞は認めたくないかもしれませんが、実際、靖国神社はコスプレ会場と化しています。



 靖国はもはや静かに参拝する場所ではなく、参拝者たちの劣化も著しいのです。戦争で殺された人たちが、軍服コスプレーヤーたちに挨拶されて喜ぶはずがありません。戦争で殺された人たちにとって、軍服は忌まわしいモノの象徴でしかありません。産経新聞は愛国右翼を自称するのであれば、このような不謹慎な輩の一掃に力を尽くすべきでしょう。

産経記事引用
「とりわけ国の指導者が、国民を代表して哀悼の意を表することは、当然の行いだ。それが堂々と行われないのはなぜなのか。
 安倍晋三首相は自民党総裁として玉串料を納めたが、直接参拝しないのはやはり残念である。
 この日の閣僚の参拝は一人もいなかった。寂しい限りである。」

→安倍政権にとっては自分たちの権力維持が最優先事項です。内閣支持率は凋落する一方であり、その上昇が望めない施策は行いません。安倍総理にとって靖国神社参拝はプラスにならないどころかマイナスになると判断されたのです。安倍さんと同じ考えを共有する宗教施設であっても、利用価値が無ければ見捨てられるということです。

産経記事引用
「長期政権を築いた小泉純一郎首相は平成13年から18年まで年1回の靖国参拝を続けたものの、多くの首相が参拝を見送っている。いわれなき非難を行う中国や韓国への過度の配慮からだ。それがさらなる干渉を招いてきた。」

→小泉元総理が靖国参拝を繰り返してきたのは、日本遺族会の票が欲しかったからに過ぎません。また、中国・韓国の「いわれのない非難」とは何でしょうか?中国だけで千数百万人という人たちが虐殺されているのです。被害者は韓国の従軍慰安婦だけではないのです。被害者には非難する資格がないと、産経新聞は主張するのでしょうか?安倍政権は、広島・長崎に原爆を落とされてもアメリカに対して非難の声を上げられませんが、そのような情けない態度をアジア諸国にも強要してはなりません。日本の政治家が靖国神社を参拝することに対して、中国・韓国が干渉するのは当然です。

産経記事引用
「安倍首相も25年12月に参拝した後、参拝を控えている。
 首相はこの日、名代の柴山昌彦総裁特別補佐に『参拝に行けずに申し訳ない』と託したという。だれに対して申し訳ないのか。」

→安倍さんは、日本遺族会・日本会議など集票マシンとして活躍してくれた人たちに対して申し訳ないのです。

産経記事引用
「海外の激戦地には、いまなお多くの遺骨が眠っていることも忘れてはならない。」

→未収用の遺骨数を地域別に示します。
中国(23万)▽インド(1万)▽ミャンマー・タイ・マレーシアなど(4万6000)▽フィリピン(37万)▽インドネシア・北ボルネオ(2万5000)▽中部太平洋(17万)▽ビスマーク・ソロモン諸島(6万)▽ロシア・モンゴル(3万)▽北朝鮮など(5万)

 自衛隊が常駐している東京都小笠原村硫黄島ですら、依然として1万体以上が放置されています。

 意外ですが、遺骨収集は国家の責任で行うという根拠法が戦後70年近く存在していなかったのが大きな原因です。歴代自民党政権は、遺骨収集に幕引きを図ることばかりに熱心でした。戦争で亡くなった人たちの遺骨を帰還させるための超党派議員立法「戦没者遺骨収集推進法案」が可決したのは、2016年3月24日です。2024年までに集中実施することになっていますが、遅きに失したと言わざるを得ません。下記リンク先の記事も参照してください。

【信じてはいけない!】政府は必ず国民を見捨てる。

産経記事引用
「国や故郷、家族を思って逝った尊い犠牲のうえに国が築かれてきた歴史を改めて知る日としたい。」

→「国のために国民が犠牲になるのは当然だ。昔も今も変わらない。靖国に英霊として祀ってやるから後に続け!ただし、支配権力層は対象外」という主張に他なりません。

最後に;
 情報弱者ほど簡単に産経新聞の主張に同調しやすい傾向があります。「耳に心地よい産経記事が大好きなんだ!」などという態度は知的な怠惰に過ぎません。ネトウヨさんだって、自分がダマされて嫌な思いをするのは避けたいはずです。是非とも冷静になって考えて欲しいと思います。

以上

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政治家が靖国神社を参拝してはいけないのはナゼか?

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 結論を先に言いますと、国民の代表である政治家は靖国神社に参拝してはいけません。私人であっても参拝したら見識を疑われることを覚悟するべきです。宗教法人である靖国神社の基本的立場は、同じ敷地内の遊就館で示されています。要点を分かりやすく述べると、次のようになります。

「天皇の軍隊が行ったのは自衛のための戦争であり、侵略戦争では断じてない。日本軍の行動を邪魔する者は皆テロリストだ。我々は何も悪いことはしていないので謝罪する必要はない。」

 歴史的事実を知らず問題意識もない日本人にとっては耳に心地よいかもしれません。しかし、実際に侵略され殺された側の諸外国はこんな施設の存在を絶対に許さないでしょう。内閣の最高責任者である総理大臣がそんな場所へ度々参拝している訳ですから、外交関係が壊れてしまうのは当然です。

出典:テレビ朝日

 もしもドイツの首相がナチス幹部の墓に花を添えようものなら、一瞬にして政治生命が絶たれることは確実です。しかし日本の総理大臣は、合祀されている1068人の戦争犯罪人(14人のA級戦犯を含む)に何度頭を下げても平気です。誠に不思議な現象です。戦犯が合祀されるため、天皇陛下は靖国神社に参拝していません。日本の政治家たちは事の程度の見識を持って頂きたい。ちなみに、靖国神社は海外から戦争神社(war shrine)と呼ばれています。歴史を知らない人間が政治家として多数派を占めている状態は、まさに、国際的な恥さらしといえるでしょう。平和憲法を遵守する義務を放棄しないでもらいたい。

 さて、2017年8月15日も、従来と似たような光景が繰り返されました。国会での国民に対する説明はおざなりのくせに、国際的な恥さらし行為には熱心なのですから、大したものです。なぜ、右翼を自称する人たちは怒らないのでしょうか?

政治家による靖国神社集団参拝(2017年)出典:朝日新聞

 参拝を終えた政治家たちが記者から理由を尋ねられると、「戦争で犠牲になった人たちへ哀悼の意を示すため」などと言うことが多いですが、哀悼の意を示すための手段が不適切なことに気付くことができません。思考停止しているからです。また、「参拝するしないは信仰の自由の問題だ。他国から干渉されたくない。」などと開き直る人もいますが、加害者が被害者に対して「お前の気持ちなど知ったこっちゃない!」と言っているのと同じです。基本的なコミュニケーション能力・共感能力が欠如しているので、こういう人たちが外国語を学んでも意味がありません。ケンカになるだけです。日本という国の外交能力の弱さは、こういうところに根本原因があります。

 日本遺族会の票が欲しくて靖国参拝を約束する総理大臣もいます。総理在任中に6回も靖国参拝をした小泉さんはその代表です。ただし、すべての遺族が総理の靖国参拝を喜んでいる訳ではありません。戦争を美化し、過去の行いに何の反省もない靖国神社の考え方に眉をひそめる人も多いのです。

 小泉さんの子分だった安倍さんも過去の失敗への反省が全くありません。ジャパンタイムズの2014年7月28日付記事「A trip around the Yushukan, Japan’s font of discord」から一部を以下に引用します。

引用始め
*******************
安倍総理は、この靖国教義に固執していることを隠そうともしない。彼は、従軍慰安婦が強制連行されたことに異議を申し立てる文書を出し、東京裁判で戦争犯罪者たちが有罪判決を受けたことに抗議した。また、日本がアジアで起こした戦争は侵略ではなく自衛であると主張している。安倍総理は一議員だった1997年、「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」を立ち上げ、また、「新しい歴史教科書をつくる会」を率いていた。つくる会は2005年に新しい教科書を出版したが、1930年代と40年代に日本がアジアを蹂躙した事実を覆い隠しているとして非難された。
*******************
引用終わり

 そんな安倍さんは、戦争ができる国造りへ向けてひたすら邁進しています。

安倍政権の政策 出典:ニュースサイトハンター

 将来、同盟国アメリカと共に日本が侵略戦争をすることになった場合、安倍さんは「自衛のための戦争だから憲法違反ではない」と言い訳することでしょう。戦前思想から何も進歩していない反動右翼に付ける薬はありません。有権者が退場宣告するしか方法は無いのです。

オマケ:

以上

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731部隊の犯罪が今もなお続いているのはナゼか?

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 2017年8月13日に放送された、「NHKスペシャル 731部隊の真実 ~エリート医学者と人体実験~」の内容がスゴイと話題になっている。ネトウヨが発狂しそうな内容を、安倍政権の広報機関であるNHKが流していることに驚きを覚えた。内閣支持率が低下すると、御用マスコミでも良心的な番組を放送できるようになるらしい。下に、番組動画リンクを貼るので参考にして欲しい。


「731部隊の真実~エリ―ト医学者と人体実験~」… 投稿者 gomizeromirai

 NHKのホームページから、番組内容の紹介部分を引用させていただく。

引用始め
********************
戦時中、旧満州で密かに細菌兵器を開発し実戦で使用した、731部隊。部隊が証拠を徹底的に隠滅、元隊員が固く口を閉ざしたため、その実像を知る手がかりは限られてきた。
今回NHKは、終戦直後、旧ソ連で行われたハバロフスク裁判の音声記録を発掘。20時間を越える記録では、部隊中枢メンバーが、国防や国益のためとして細菌兵器を開発した実態、そして旧満州で日本に反発していた中国や旧ソ連の人々を「死刑囚」とし、細菌兵器開発の「実験材料」として扱っていた実態を、克明に語っていた。
さらに、元隊員の資料や当時の学術界の膨大な記録からは、軍だけでなく学術界からも多くの研究者が部隊に参加していた実態が浮かび上がってきた。満州事変以降、学術界が軍と関係を深めていった過程、そして日本軍が旧満州で反発する人々を死刑にすることについて世論の支持が高まる中で「死刑囚」を研究に活用する動きが相次いでいた実態も明らかになってきた。
731部隊はどのようにして生まれ、そして医学者たちは、どう関与していったのか。数百点にのぼる資料をもとに、731部隊設立の謎に迫る。
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引用終わり

 この番組は、人体実験という犯罪に関与した側の日本人証言が元になっている。731部隊の犯罪は、千数百万人という中国人殺害のうちのごく一部に過ぎないが、貴重な記録である。

 731部隊関連の犯罪は、本多勝一氏の著書「中国の旅」にも記されている。NHKスペシャルと異なるのは、被害に遭った中国側からの証言で構成されていることだ。

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 中国を取材した目的を本多勝一氏は同書で次のように述べている。

「戦争中の中国における日本軍の行動を、中国側の視点から明らかにすることだった。それは、侵略された側としての中国人の「軍国主義日本」像を、具体的に知ることでもある。とくに日本軍による残虐行為に重点をおき、虐殺事件のあった現場を直接たずね歩いて、生き残った被害者たちの声を直接訊きたいと考えた。」

 「中国の旅」の「人間の細菌実験と生体解剖」という部分から一部を引用する。

引用始め
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日本が降伏したとき、医科大学の責任者たちは犯罪の証拠隠滅をはかって多くを焼いたり破壊したりしました。日本帝国主義がここで中国人を材料にやっていた犯罪とは、侵略戦争のための細菌実験・生体解剖実験・監獄で殺された死体を使っての実験などです。

1936年から1942年までここに在籍していた微生物の主任教授に「北野政次」という医者がいました。「北野」は関東軍の陸軍少将になり、731部隊の隊長として中国人に対する数え切れぬ犯罪をおかしています。

1939年2月、「北野」は発疹チフス予防接種に関する論文を書いた。これは13人の元気な中国人の体を使って病原体を伝染させ、そのあと生きたまま解剖した“研究”の結果である。

実験に使われた13人のうち、2人に対してはワクチンの予防注射をせずにチフス菌を注射した。11人に対しては予防注射をしてから1か月後に接種した。

こういう実験は、もちろん中国人のためなどではなく、侵略軍に奉仕するためのものでした。当時この地方にチフスが流行していたわけですが、そこへ攻めこむ日本軍がこれにかからないようにするために、中国人を使って実験したのです。

日本敗戦直前の1945年3月に「北野」は帰国しています。だから彼は、この大きな犯罪に対する侵略された人民の裁判をまぬかれたままです。

実験して生体解剖というパターンには、たくさんの例があったようだ。(中略)張さんは1932年からここで働いていた。1941年の冬のある夜、「西村」という日本人係員が解剖室の死体を片付けるように命じた。(中略)生臭いにおいとともに、床に新しい血がいっぱい流れている。解剖台の上に8人の死体がまちまちに置いてあった。肝臓・肺臓などの切片が散乱している。目玉がくりぬかれ、脳ミソもとりだされている。

「私は解剖学教室に長くつとめたから知っていますが、死体であれば決してこんな鮮血は流れたりしません。血の色が全く違います。だれが見ても、あれは生きた人間から流れ出した血だったのです」と張さんはいった。
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引用終わり

 上記引用文書中に出てくる「北野政次」氏は、その後、ミドリ十字に勤務していた。北野氏は、朝日新聞の本多勝一記者から電話取材されたが、事実関係についてほとんどダンマリ状態だったことが「中国の旅」に記載されている。卑怯者とは、北野氏のような人間のためにある言葉であろう。

 北野氏を含め731部隊の生き残りたちは、戦後、医学・薬学各分野で重鎮として君臨し続けた。前述のミドリ十字は、薬害エイズ事件で有名になった会社である。学者・官僚・メーカー・政治家がグルになり、健康被害を顧みず自分たちの利益を貪った犯罪だ。戦犯をキチンと裁いて、再発防止策を徹底しなかったので、同種の過ちが繰り返されたのである。

 731部隊的な犯罪は、戦後の日本でも無数に行われてきた。

・水俣病、イタイイタイ病、スモン病など多くの公害、薬害事件において、事実を隠蔽・改ざんし、常に政府・企業側に有利な報告をでっち上げた。
・有害無益なワクチン接種強制により副作用が多発した。
・福島原発事故による放射線被ばくの健康被害を隠蔽・過小評価している。
・ガン検診・手術・抗がん剤投与・放射線を推進し、患者を地獄の苦しみの末に殺す。医者と製薬メーカーは大儲け。

 本来なら、731部隊の関係者をきちんと裁判にかけ、残酷な人体実験の責任を明確にし処罰し、各界から追放すべきだったのである。しかし、米国と闇取引をして、実験の成果を渡す代わりに全員が無罪放免になった。その結果、人命を軽視し、人間を実験材料に使い、その成果を自分の昇進や金儲けに使うおぞましい伝統が戦後の日本に蔓延したのである。

 「731部隊」とは、遠い昔に異国で起こった出来事ではない。現代の日本でも起こっている犯罪である。自分とは無関係などと思わないで欲しい。

以上

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アパホテルが客室に置くべき本はこれだ!日本に進歩をもたらす名著を紹介。

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 歴代内閣が踏襲している村山談話は、外務省ホームページの下記リンクに掲載されています。

「戦後50周年の終戦記念日にあたって」(いわゆる村山談話)

 上記リンクの村山談話から日本の侵略戦争に関する部分を抜き出します。

「植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。」

 上記の抽象的な表現から、具体的な事実をイメージすることができる日本人は少数派だと思います。近隣諸国で侵略被害に遭った人たちの視点を提供してくれる著作を以下に紹介します。

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 この本は1971年、元朝日新聞記者の本多勝一氏が約40日かけて中国を取材した内容が記されています。朝日新聞、朝日ジャーナル、週刊朝日で連載され大反響を起こしました。中国を取材した目的を本多氏は同書で次のように述べています。

「戦争中の中国における日本軍の行動を、中国側の視点から明らかにすることだった。それは、侵略された側としての中国人の「軍国主義日本」像を、具体的に知ることでもある。とくに日本軍による残虐行為に重点をおき、虐殺事件のあった現場を直接たずね歩いて、生き残った被害者たちの声を直接ききたいと考えた。」

 戦後26年経ったときに、このような中国取材をした理由を、本多氏は同書の中で5個挙げています。以下私の要約です。

①中国への侵略行為に関して日本側が誠意ある言動・行動をとらなければ、日中国交を進展させることはできない。日本政府はもちろんだが、マスコミも侵略戦争の調査報道をしておらず、日本国民に知らせる努力を怠ってきた。

②日本の侵略戦争によって中国人が千何百万人も殺された事実を一般の日本人は知らない。知っていたとしても、噂レベルの曖昧なイメージだ。この無知が、反動右翼勢力の跋扈を許す結果につながっていく。

➂ベトナム戦争での米軍の虐殺行為をアメリカ人ジャーナリストが報道していることに対して、日本人は立派だとほめている。他国のジャーナリストの行動に感嘆してばかりではなく、日本人も実践した方がよい。

④広島・長崎への原爆投下、東京大空襲などの告発・記録運動が盛んだが、これは被害者視点のものであり、加害者視点の記録が欠落している。ナチス・ドイツによる加害記録は日本国内にたくさん出回っているにも関わらず、旧日本軍の加害記録が存在しないのはおかしい。

⑤自分の家族が殺されたり家が焼かれた事実を中国人たちは記憶している。その生々しい具体的風景を日本人が知れば、日本の軍国主義復活を警戒する中国側の気持ちを理解し易くなるだろう。虐殺した側の国民がその事実を知らないのは犯罪の上塗りだ。

 「中国の旅」の目次を以下に引用します。

・中国人の「軍国日本」像
・旧「住友」の工場にて
・矯正院
・人間の細菌実験と生体解剖
・撫順
・平頂山
・防疫惨殺事件
・鞍山と旧「久保田鋳造」
・万人坑
・蘆溝橋の周辺
・強制連行による日本への旅
・上海
・港
・「討伐」と「爆撃」の実態
・南京
・三光政策の村(注)

注)殺し尽くす、焼き尽くす、奪い尽くすことを「三光」という。

 最後の「三光政策の村」での記述を一部引用します。

「石段を登っていたとき、ただならぬ気配にふりむいた。老人が三人、息をきらせて石段を登ってくる。私のところまでくると、その一人がいきなり両手を出して広げた。なにかを訴えようとするまなざしに、涙があふれている。広げた両手の指は、親指以外がみんな短く切れていた。『あの現場から脱出した一人です。猛火の中を逃げるとき、火傷をして指先を失いました』と、潘広林さんがいった。単用有さんは、そう通訳してから老人たちに事情をきいていたが、何もいわずに、私に背を向けて歩き出した。歩きながらハンカチを出して顔にあてた。単さんは泣いているのであった。」

「涙のおさまった単さんが、さっきの事情を説明した。あの老人たちは、日本から新聞記者が取材にきたことを知って、ここまでかけつけたのだった。31年前の、あのときのすべてを、どうかくわしく知ってほしい。自分たちも、なにか訴えたい。日本の人民に知らせてほしい。そんな、やむにやまれない思いで彼らはかけつけたのだと、単さんはいった。話す人が泣きながら語るときも、単さんは感情をけんめいに押さえて正確な通訳に努めるのが常だったが、この老人たちの心情には強く打たれて、どうしても涙をこらえきれなかったという。」

 歴史的な著作を残してくれた本多勝一氏に対しては感謝するばかりですが、ネット上では事実に基づかない非論理的な誹謗中傷が溢れています。ネトウヨと呼ばれている人達は精神的に余裕が無く、自分のことだけに手一杯で他者への想像力・共感力が欠落しているようです。

 本書の最後に、高史明氏が解説文を書いています。一部を引用します。

「銃殺された死者、刺殺された死者、焼き殺され、あるいは生き埋めにされた死者、強姦されたうえ腹を切り裂かれた死者、銃剣で串刺され空中へ放り捨てられた赤ん坊の死者、そのほとんどが平和な村人であり、おとなしい労工であった。これらおびただしい数の死者こそが、生者をして、ありし日の出来事を語らしめているのである。(中略)その死者の前では、他のいかなる言葉も重みを失う。本書においては、その死者の眼ざしこそが、他のすべての言葉を超えて重く存在するのである。私たちもまた、この死者からのメッセージを、いかに受け止めようとしているかを、死者の側からまっすぐ見つめられていると言ってよい。」

「死者は怨みを言わない。ただ、無限の深みから、私たちを見つめる。見つめられている私たちが、生者として何を願い、何をなすべきかは、すでに明らかである。死者の無言の願いに応えていく方向にこそ、私たちの未来へ通じる道がある。」

最後に:
 皆さんに本書「中国の旅」をお薦めいたします。ただし、空き時間に気楽に読める本ではありません。私自身は1989年頃に本書を読みましたが、非常に重い気持ちになったことを白状します。しかし、歴史を考えるうえで視野が広がったことは確かです。
 被害者視点ばかりの日本の歴史教育は欠陥を抱えており、それを補うための貴重な書物だと思います。

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 アパホテルは、侵略戦争否定本を客室に置いて国際的な批判を浴びていますが、2020年の東京オリンピックへ向けて、「中国の旅」に差し替えた方がホテルの格が上がると思います。

以上

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【旧日本軍の性暴力を正当化!】被害者を侮辱した筒井康隆氏の妄言を考える。

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写真(筒井康隆氏) 出典:朝日新聞

 小説家・劇作家・俳優として有名な筒井康隆氏は1934年生まれの82歳だ(2017年現在)。数多くの作品を発表してきており、外国語に翻訳されたものも多い。差別的表現などで物議を醸したこともある。安倍昭恵夫人と異なり正真正銘の私人であるが、今回は踏み越えてはならない一線を越えてしまったようだ。

 筒井氏は、自身の2017年4月4日付ブログ記事で次のようなコメントをしている。

「長嶺大使がまた韓国へ行く。慰安婦像を容認したことになってしまった。あの少女は可愛いから、皆で前まで行って射精し、ザーメンまみれにして来よう。」
 
 表現の自由を持ち出せば何を言っても許される訳ではない。朝鮮日報の日本語版は「衝撃的な妄言」と批判している。この発言は次の点で問題だ。

1)旧日本軍の侵略行為という事実を直視せず、当然、反省もしていない。

2)被害者のみならず、韓国人全体に対する侮蔑感情が露わである。

3)戦時中と同じ性暴力を再び繰り返してやるぜ、という挑発行為である。

 当然、韓国側の反発は大きく、韓国語に訳されて主要書店でベストセラーになっていた筒井氏の著作「モナドの領域」は販売中止になった。おなじく韓国で出版予定だった「旅のラゴス」も契約解除となった。わざわざ韓国語に訳されて出版されたということは、韓国人のファンが多いという証明である。また、筒井氏はアニメーション版「時をかける少女」の原作者としても韓国内で有名なのだ。

 筒井氏は「美しい国:日本」に泥を塗ったのである。日本国内で真の保守を自認する方々はさぞかし怒り心頭だろう。

 筒井氏は朝日新聞の取材に対して、次のように弁明している。

「あんなものは昔から書いています。ぼくの小説を読んでいない連中が言っているんでしょう。本当はちょっと『炎上』狙いというところもあったんです」
「ぼくは戦争前から生きている人間だから、韓国の人たちをどれだけ日本人がひどいめに遭わせたか、よく知っています。韓国の人たちにどうこういう気持ちは何もない」

 残念だが、2017年4月11日の時点で発言の撤回もないし、反省・謝罪の弁もない。昔から著作の中で同じような暴言を吐いてきたなら尚更問題だ。炎上を狙うにしても方法が不適切だ。筒井氏が本当に日本の侵略行為を良く知っているならば、被害者に気持ちに配慮しようとしないのはナゼだろう。韓国に対する敵対感情は見られるが、友好的な態度はかけらもない。上記の見苦しい言い訳は支離滅裂だ。恥の上塗りという表現がふさわしい。

 加害者側はすぐ忘れても、被害者側はその事実を忘れることはない。旧日本軍による性暴力の被害者を前にして、筒井氏は同じ侮辱発言ができるのだろうか?強姦は結果として殺人につながるケースも多い。無限の深みからこちらを見つめる死者の眼差しを想像したことはないのだろうか?歴史から学ぶという知性を持ち合わせていなくても作家活動をすることは可能なのだろうか?彼は2002年に紫綬褒章を受章しているが、人間性は考慮されていないらしい。

 筒井康隆氏の今回の暴言は、私の理解を超えるものだ。同じ人間としておぞましいという感想しかない。安倍内閣の閣僚でもこんな発言には賛同しないだろう。

 筒井氏は長年かかって積み上げてきた自分の実績に自ら泥を塗ってしまったのだ。プロの作家としてプライドがあるならば、少なくとも、韓国人の筒井康隆ファンをガッカリさせてしまった責任は取るべきだろう。どう責任を取るかは本人が判断すればよい。

参考リンク:
筒井康隆氏、慰安婦像への侮辱促す? 「炎上狙った」

Japanese novelist sparks outcry in South Korea with insults about ‘comfort woman’ statue

以上

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【韓国の慰安婦像設置問題】安倍政権の傲慢な態度を支えているものは何か?

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 岸田文雄外相が2015年末に韓国を訪問し、尹炳世外相との会談で慰安婦問題を妥結させようと目論んでいた頃、安倍政権の応援に熱心な産経新聞は、『「慰安婦」協議 原則外れた妥結許されぬ』と題して記事を掲載しました。詳しくは下記リンク先でご確認ください。

「慰安婦」協議 原則外れた妥結許されぬ

 この記事に限らず、産経新聞の主張は一貫しています。日本会議と同じで、ブレることがありません。要旨は次の通りです。

「日本は韓国を侵略したことはなく、法的責任も、賠償義務もない。従軍慰安婦という名の娼婦が居たらしいが、これは韓国の国内問題として処理すべき事である。韓国国民の反日感情を煽る報道・教育はまことにケシカラン。根拠もなく、日本側へ繰り返し文句を言うのはやめよ。情に厚く寛大な日本政府が、アジア女性基金を通じて、困窮している元慰安婦を援助しているではないか。韓国は礼を述べるべきであり、日本側を非難する資格はない。」

 極右と称され、販売部数も低下の一途を辿っている産経新聞ですが、傲慢で事実に基づかない彼らの主張は、多くの日本国民に意識的・無意識的に支持されています。なぜでしょうか?理由は以下の3点でしょう。

1)
 他国に対する侵略戦争(加害者)の歴史をまともに学校で教えられていないので、そもそも知識を持っていない。欠陥教育を補うために、自主的に書籍を購入し学び直す例は稀である。歴史的事実という知識がないので問題意識も生まれない。

2)
 反省し謝罪するよりも、相手を悪者にして非難しているほうが楽である。

3)
 欧米へのコンプレックスの代償行為として、アジア諸国を見下していたいという気持ちがある。

 上記の愚劣な国民心情や無知をうまいこと利用しているのが安倍政権です。安保法制を成立させて法治国家としての土台を破壊したにもかかわらず高い支持率を維持しているのは、国民側の無知が大きく寄与しています。「日本は侵略などしたことがない美しい国である。」と強気の姿勢を崩さなければ、多くの国民が拍手喝采してくれるのです。実際私の周りには、「反韓」「反中」の感情を増幅させている人がたくさんいます。

 このような日本国民の世論を背景として、安倍政権はその傲慢な態度をますます増長させています。

 菅義偉官房長官は2017年1月6日午前の記者会見で、2016年末に韓国・釜山の日本総領事館前に慰安婦像が設置された行為への対抗措置として、次の4項目を発表しました。

①長嶺安政・駐韓日本大使と森本康敬・在釜山日本総領事の一時帰国
②日韓通貨交換の取り決め協議の中断
③日韓ハイレベル経済協議の延期
④在釜山総領事館職員による釜山市関連行事への参加見合わせ

写真(慰安婦像設置への対抗措置を発表する菅官房長官)

 一般的日本人の心情は、以下のようなものでしょう。

「旧日本軍による性奴隷被害など事実無根」
「謝罪の必要はない」
「韓国はいつまで蒸し返すつもりだ?」
「どうせ金目当てだろ」

 侵略戦争の加害者側は簡単に忘れますが、被害者側は絶対に忘れることはありません。今のままでは問題は悪化するばかりです。戦後、都合の悪い歴史的事実と真摯に向き合い国際社会の信頼を勝ち取ったドイツの例もあるのですが、今のところ、日本の取っている行動は原則と真逆であり、国際社会の不信感を増幅させる結果をもたらしています。

 事実から目を背け、刹那的で易きに流されていたほうが気持ち的に楽なのは確かです。しかし、進歩することはありません。諸外国からの信頼を失い、国際的に孤立する道を歩むことになります。貿易立国日本の土台を崩すことにつながります。安倍政権や御用メディアの主張に流されていても、日本国民の生活が安定することはありません。

 歴史上の不都合な事実と向き合わない姿勢、視野の狭さや思慮の浅さ、薄っぺらな愛国心といったものは、反動右翼思考の成せる技です。進歩とは真反対ですから、取り返しのつかないミスを何回でも繰り返すのです。福島原発事故という人災は、チェルノブイリ事故などの歴史から学ばない反動右翼的な思考・態度から生まれたのです。2011年に発生し、今も収束していない大事故から日本人は何を学んだのでしょうか?マスコミも含めた原発マフィアたちは情報の隠ぺいばかりに熱心です。今のままでは、将来必ず同じ過ちを繰り返すことでしょう。

 戦時中の性的搾取犯罪を誤魔化すため、「従軍慰安婦」問題と言い換える悪知恵にはうんざりしますが、自分には関係ないことだと思わない方がいいと思います。自分が直接の加害者でなくても、歴史的事実から教訓を謙虚に学ぶ姿勢を身に付けるべきです。将来、同じ犯罪を繰り返さないためにも事実を直視すべきです。そのためにも、「美しい国:日本」という妄想に取り憑かれているような政権に、歴史教科書を改竄させてはなりません。

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