産経新聞の正しい読み方を教えます。

 安倍政権の広報誌として名高い産経新聞が、2017年8月16日付で次のようなタイトルの記事を掲載しました。

戦後72年の靖国、いったい誰に「申し訳ない」のか 首相も閣僚も直接参拝せず

 産経新聞は購読者数が凋落傾向にあるとはいえ、ヤフーなどウェブ上で影響力が強く、20代、30代の若者は日々洗脳され続けています。問題意識の少ない年配の保守層も、そのほとんどが産経新聞の主張に同調しています。しかし、反動極右的な「思想」を日々刷り込まれ続けるのは危険です。戦前の悲劇を再び繰り返す原因になるからです。

 以下、当該産経記事を引用しつつ、それへの反論を試みます。

産経記事引用
「戦後72年の終戦の日、靖国の杜(もり)には雨にもかかわらず、多くの参拝者が訪れた。国に命をささげた人々の御霊(みたま)に改めて哀悼の意を表したい。」

→情感たっぷりの表現に負けてはいけません。国に命をささげた、というのは事実に反します。赤紙でイヤイヤ徴兵されたのです。その場の空気を読み、仕方なく戦地に赴いたのです。戦死者のほとんどは餓死であり、上層部から見捨てられたのです。特攻隊員は死を強制された人たちです。日本というシステムによる大量虐殺だったのです。国のためを思って命をささげたなどと美化してはいけません。

参考記事リンク:
「神風」から「kamikaze」という英語が生まれたのはナゼか?

産経記事引用
「東京・九段の靖国神社は、わが国の戦没者追悼の中心施設である。幕末以降、国に殉じた246万余柱の御霊がまつられている。うち213万余柱は先の大戦の戦没者だ。終戦の日に参拝する意義は大きい。」

→参拝を推奨するもっともらしい言葉にダマされてはいけません。宗教法人である靖国神社の基本的立場は、同じ敷地内の遊就館で示されています。要点を分かりやすく述べると、次のようになります。

「天皇の軍隊が行ったのは自衛のための戦争であり、侵略戦争では断じてない。日本軍の行動を邪魔する者は皆テロリストだ。我々は何も悪いことはしていないので謝罪する必要はない。」

 歴史的事実を知らず問題意識もない日本人にとっては耳に心地よいかもしれません。しかし、実際に侵略され殺された側の諸外国はこんな施設の存在を絶対に許しません。内閣の最高責任者である総理大臣がそんな場所へ度々参拝している訳ですから、外交関係が壊れてしまうのは当然です。A級戦犯が合祀されて以降は、天皇陛下も参拝をやめています。

詳しくは、下記リンク先記事を参照してください。

「政治家が靖国神社を参拝してはいけないのはナゼか?」

産経記事引用
「靖国は静かな追悼の場である。その国の伝統文化に従い戦没者の霊をまつり、祈りをささげることはどの国も行っていることだ。」

→産経新聞は認めたくないかもしれませんが、実際、靖国神社はコスプレ会場と化しています。



 靖国はもはや静かに参拝する場所ではなく、参拝者たちの劣化も著しいのです。戦争で殺された人たちが、軍服コスプレーヤーたちに挨拶されて喜ぶはずがありません。戦争で殺された人たちにとって、軍服は忌まわしいモノの象徴でしかありません。産経新聞は愛国右翼を自称するのであれば、このような不謹慎な輩の一掃に力を尽くすべきでしょう。

産経記事引用
「とりわけ国の指導者が、国民を代表して哀悼の意を表することは、当然の行いだ。それが堂々と行われないのはなぜなのか。
 安倍晋三首相は自民党総裁として玉串料を納めたが、直接参拝しないのはやはり残念である。
 この日の閣僚の参拝は一人もいなかった。寂しい限りである。」

→安倍政権にとっては自分たちの権力維持が最優先事項です。内閣支持率は凋落する一方であり、その上昇が望めない施策は行いません。安倍総理にとって靖国神社参拝はプラスにならないどころかマイナスになると判断されたのです。安倍さんと同じ考えを共有する宗教施設であっても、利用価値が無ければ見捨てられるということです。

産経記事引用
「長期政権を築いた小泉純一郎首相は平成13年から18年まで年1回の靖国参拝を続けたものの、多くの首相が参拝を見送っている。いわれなき非難を行う中国や韓国への過度の配慮からだ。それがさらなる干渉を招いてきた。」

→小泉元総理が靖国参拝を繰り返してきたのは、日本遺族会の票が欲しかったからに過ぎません。また、中国・韓国の「いわれのない非難」とは何でしょうか?中国だけで千数百万人という人たちが虐殺されているのです。被害者は韓国の従軍慰安婦だけではないのです。被害者には非難する資格がないと、産経新聞は主張するのでしょうか?安倍政権は、広島・長崎に原爆を落とされてもアメリカに対して非難の声を上げられませんが、そのような情けない態度をアジア諸国にも強要してはなりません。日本の政治家が靖国神社を参拝することに対して、中国・韓国が干渉するのは当然です。

産経記事引用
「安倍首相も25年12月に参拝した後、参拝を控えている。
 首相はこの日、名代の柴山昌彦総裁特別補佐に『参拝に行けずに申し訳ない』と託したという。だれに対して申し訳ないのか。」

→安倍さんは、日本遺族会・日本会議など集票マシンとして活躍してくれた人たちに対して申し訳ないのです。

産経記事引用
「海外の激戦地には、いまなお多くの遺骨が眠っていることも忘れてはならない。」

→未収用の遺骨数を地域別に示します。
中国(23万)▽インド(1万)▽ミャンマー・タイ・マレーシアなど(4万6000)▽フィリピン(37万)▽インドネシア・北ボルネオ(2万5000)▽中部太平洋(17万)▽ビスマーク・ソロモン諸島(6万)▽ロシア・モンゴル(3万)▽北朝鮮など(5万)

 自衛隊が常駐している東京都小笠原村硫黄島ですら、依然として1万体以上が放置されています。

 意外ですが、遺骨収集は国家の責任で行うという根拠法が戦後70年近く存在していなかったのが大きな原因です。歴代自民党政権は、遺骨収集に幕引きを図ることばかりに熱心でした。戦争で亡くなった人たちの遺骨を帰還させるための超党派議員立法「戦没者遺骨収集推進法案」が可決したのは、2016年3月24日です。2024年までに集中実施することになっていますが、遅きに失したと言わざるを得ません。下記リンク先の記事も参照してください。

【信じてはいけない!】政府は必ず国民を見捨てる。

産経記事引用
「国や故郷、家族を思って逝った尊い犠牲のうえに国が築かれてきた歴史を改めて知る日としたい。」

→「国のために国民が犠牲になるのは当然だ。昔も今も変わらない。靖国に英霊として祀ってやるから後に続け!ただし、支配権力層は対象外」という主張に他なりません。

最後に;
 情報弱者ほど簡単に産経新聞の主張に同調しやすい傾向があります。「耳に心地よい産経記事が大好きなんだ!」などという態度は知的な怠惰に過ぎません。ネトウヨさんだって、自分がダマされて嫌な思いをするのは避けたいはずです。是非とも冷静になって考えて欲しいと思います。

以上

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