残業が反社会的行為なのはナゼか?「karoshi」を撲滅するためには何が必要か?

 労働基準法では、一日の労働時間は8時間、1週間で40時間に制限されています。使用者側と労働組合が協定を結べば、1か月で45時間、1年で360時間の残業をさせることができます。しかし、労使が同意して特別条項を協定に追加すれば、1年のうち6か月を上限として、残業の上限を超えて働かせることができるのです。上限を超えて何時間までという規定がないため、実質、青天井で働かせる悪徳経営者が後を絶ちません。

図(36協定による残業時間の上限一覧表) 出典:赤旗

 哲学のかけらもなく、新自由主義に毒された軽薄な経営者が跳梁跋扈し、労働者たちは長時間の搾取労働をさせられています。理不尽な慣行に異を唱えない奴隷サラリーマンたちは、出る杭になるのを極度に恐れ、周囲と一緒に長時間残業に取り組みます。その結果、過労死や過労自殺が頻発し、「karoshi」という英語まで生まれてしまいました。日本特有の現象で外国には相当する単語が存在しないため、仕方なく、「karoshi」と表現したのです。日本にとって誠に不名誉なことであり、国際的な恥さらしです。「美しい国」が聞いて呆れます。

 安倍総理が議長を務める働き方改革実現会議は、2017年3月28日、実行計画の政府案を示しましたが、その内容は、「karoshi」の反省がまるで感じられない代物です。以下、箇条書きします。

①残業時間の上限を1年で720時間、1か月平均で60時間とする。
②忙しい時期は1か月あたり100時間までの残業を認める。もしくは、2~6か月間の平均で80(時間/月)を上限とする。
③休日出勤も含めれば、年間最大で960時間の残業を可能とする。
④医者、ドライバー、建設作業員は5年間、この規制対象から外す。
⑤研究開発職は、時間外労働規制の対象外とする。

 安倍政権を裏から操っている強欲経団連の榊原会長と、御用組合の集まりである連合の神津会長は、首相官邸の働き方改革実現会議に仲良く参加し、上記①~⑤の方針に賛成する意向です。

 本来ならば連合は労働者の立場に立って、過労死防止や人間らしい生活を実現するために経営側と闘わなければならない筈です。御用組合の限界か、経団連と対峙する姿勢が全く見られません。経団連や連合は、物言わぬ素直な労働者たちから搾取する気満々です。

写真(働き方改革実現会議に仲良く参加する経団連の榊原会長と連合の神津会長) 出典:KYODO

 1か月80時間とか100時間の残業は過労死や過労自殺を起こす可能性がある数値です。政府自ら過労死の推進にお墨付きを与えたようなものです。

 仮に1か月に60時間も残業したら、地域活動・政治活動・自己啓発は困難になります。まともな家庭団らんも困難でしょう。往復の通勤時間が長い人は特にそうです。健康で文化的な生活をしつつ、民主主義を成り立たせるための活動をする時間が保証されなければなりません。会社に拘束される時間が長すぎると、人々の問題意識が低下し、社会全体の劣化が進みます。選挙での低い投票率を見れば分かるでしょう。サラリーマンに残業をさせるのは基本的に罪である、という認識を持たねばなりません。昼休みを含めた一日の拘束時間を原則8時間とし、残業に対しては極めて高い割増賃金を支払わせ、経営者に対して強い圧力をかけねばならないのです。

 1か月80時間とか100時間の残業時間上限を提案してくるということは、安倍政権には何も問題意識が無く、実質、経団連の言うがままということです。政治リーダー自らが、過労死を推進しているのです。日本国憲法蹂躙を厭わず、戦後最低・最悪の内閣と揶揄されているだけのことはあります。

 経団連は、月に100時間までの残業時間は認めてもらわないと国際的な競争力が保てないと言っています。競争力が保てないというのは、彼らが使う常套句です。意味が曖昧な脅し文句です。もしも、100時間の残業を労働者にさせなければ会社の存立が危ぶまれるというのであれば、その会社の経営方針や仕事の仕方が間違っているということです。繰り返しますが、労働者を長時間拘束すると過労死を起こし、私生活が破壊され、民主主義が機能不全になります。そうしなければ成り立たないようなビジネスを存在させてはなりません。

 そもそも、日本人の労働時間が長いと言っても、内実を見るとあまり威張れたものではありません。諸外国と比べれば非効率で無駄が多く、付き合い残業が横行しています。早く帰宅する人が罪悪感を感じる雰囲気があります。サラリーマン経営者の多くは惰性から抜け出せず、従業員を長時間拘束していないと安心できないのです。しかも、長時間労働は集中力を低下させ、仕事の質も低下します。結果として、事故・トラブルが増え、商品力が落ちます。良いことがありません。

 今まで、残業時間のことを論じてきましたが、これは、従業員が会社にいる時間を正確に把握・記録していることを前提にしています。実際には多くの会社でサービス残業が横行しており、労働時間の正確な記録を妨害しています。残業時間が労使協定の上限を超えてないように見せるため残業を記録させない、残業代を払いたくないから実際より時間を短く記録するなど悪質です。ドロボーと変わりませんね。文句ひとつ言わず従うだけの従業員がほとんどなので、経営側の増長を許しています。

 「違法なサービス残業の取り締まり」と「残業時間の上限を厳しく設定すること」。この二つは、対策する際の車の両輪です。さらに、奴隷サラリーマンではなくモノを言うサラリーマンを増やすことも不可欠です。「上の人」が何かしてくれるのを待っていても、状況は改善されません。意見を言う人間が多数派にならない限り、日本社会はブラック企業の巣窟であり続けるでしょう。

最後に:

悪徳無能経営者に殺されないためにも、自己防衛をする必要があります。

下記リンク先の記事が参考になれば幸いです。

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以上

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