国連「表現の自由」特別報告者から問題点を指摘され、安倍政権が慌てふためいたのはナゼか?

写真(国連の特別報告者であるデービッド・ケイ氏)

 表現の自由に関する国連の特別報告者であるデービッド・ケイ氏が、2016年4月、日本政府の招待で訪日し、政府高官・報道関係者・研究者らと面談しました。日本における表現の自由について調査したケイ氏は、その報告書を国連人権高等弁務官事務所のホームページで公表しました。当該報告書は、2017年6月12日の人権理事会に提出されます。

 報告書の中から主要なものを以下に記します。

ケイ氏の報告内容その1:
「自民党の憲法案は、基本的人権の不可侵性を維持する97条を削除するよう求めている。同規定を削除する草案は、日本における人権の保護を弱体化しうる。」

 粗悪な人権感覚しか持っていない自民党の改憲案について、日本人はあまり興味が無いと思いますが、海外の専門家からはしっかりと指摘されていますね。詳細については、下記リンク先の記事をご覧ください。

世界で最も先進的な日本国憲法を、安倍総理が変えたがっている理由は何か?

ケイ氏の報告内容その2:
「放送法は総務省に、NHKと民間放送局を規制する権限を与えている。この枠組みは、メディアの自由と独立に対し不当な制約を課すことになり得る。
 放送法4条に違反した場合、放送関係者の免許の停止を命じるかもしれないとする政府見解は、メディアを制限する脅迫として受け取ることができる。
 政府職員の発言で、メディアが圧力を感じた旨の報告を受けた。2015年2月24日の報道関係者との会合で、内閣官房長官は、あるテレビ番組に対し、放送法の解釈にかなっていないと批判したとされる。
 政府に対し、報道の独立性強化のため放送法4条の撤廃を勧告する。独立した放送メディア規制機関の枠組みを進展させることを強く要請する。」

 放送法の第4条は、

「実権をもつ与党だけでなく、立場の弱い野党の反対意見も取り上げること」
「権力側にとって都合の悪い事実であっても、きちんと調査報道すること」

、と解釈しなければいけません。報道機関は権力の監視という義務を果たしなさい、ということです。しかし、実質的には権力基盤がぜい弱な安倍政権は、苦し紛れに放送法第4条を次のように解釈することにしました。

「政府の意向に沿う報道こそが公平である。放送局が政権批判をしたら、総務大臣はそれをやめさせる権限がある」

 実際に2015年11月10日の衆議院予算委員会で、高市総務相と安倍晋三首相は、上記のように解釈していることを明らかにしています。しかし、この解釈は強引過ぎますし、間違っています。なぜならば、日本国憲法第21条に反するからです。

日本国憲法第21条:
1.集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2.検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

 放送法第4条の間違った解釈がまかり通り、表現の自由が侵害されるくらいなら、そんな条文は削除すべきとケイ氏は指摘しています。詳しくは、下記リンク先の記事をご覧ください。

【放送事業者に対する電波停止命令?】高市早苗総務大臣の妄言癖がエスカレートしている。

【政権批判をする司会者は始末される!】イギリスのガーディアン紙が、日本における報道の危機に言及

ケイ氏の報告内容その3:
「特別報告者は、朝日新聞勤務時に慰安婦問題を報じた植村隆氏へのハラスメントを知った。植村氏への圧力は、吉田清治氏による証言に関する朝日新聞の別の記事の事実誤認に関する議論があった後、特に強くなった。植村氏は大学で働くことになったが、大学も彼の辞職を求める団体によって攻撃された。
 特別報告者は、日本政府が、植村氏および同氏が所属する機関が被った複数の攻撃に対する批判を繰り返し行わなかったことを懸念している。」

関連記事:
「公平・中立を心掛けろ」=「つべこべ言うな!」だと知ってた?その理由を解説。

ケイ氏の報告内容その4:
「日本の第二次世界大戦への参加および慰安婦問題に関する学校教材の準備における政府の影響に関する懸念も報告されている。
 文部科学省は、いくつかの高校世界史の教科書に慰安婦に関する言及がある旨述べた。専門家は、慰安婦に関する記述が、中学校の教科書から編集削除された旨の報道を示した。
 政府が、教科書が第二次世界大戦中に犯された犯罪の現実をどう扱うかに介入することは、一般市民の知る権利や過去に対応し理解する能力を損なわせる。
 政府に対し、学校教材における歴史的出来事の解釈への介入は慎むべきこと、戦時中に日本が関わった出来事に留意し、これらの深刻な犯罪について国民に知らせる努力を支援することを求める。政府は学校のカリキュラム作成において完全なる透明性を確保し、教科用図書検定調査審議会を政府の影響からいかに守るかを再検討することで、公教育の独立性に貢献すべきである。
 慰安婦問題を含む過去の重大な人権侵害に係る公開情報を検証していくため、政府は「真実の権利」国連特別報告者の訪問招請を検討すべきだ。」

 ドイツと異なり、日本の歴史教育は被害者視点に極度に偏っています。加害者視点を持ち合わせない偏った知識が晩節を汚す事例を、以下リンク先で紹介しています。

【旧日本軍の性暴力を正当化!】被害者を侮辱した筒井康隆氏の妄言を考える。

ケイ氏の報告内容その5:
「特定秘密保護法は知る権利の保護範囲を狭めている。同法はジャーナリストとその情報源に刑罰を課す危険性にさらしている。
 政府に対し、報道関係者の業務に萎縮効果を与えないよう特定秘密保護法の改正を促す。日本の国家安全保障に危害を与えない国民の関心事項である情報を開示しても処罰されないことを保障する例外規定を含めることを奨励する。」

 特定秘密保護法に関しては、下記の関連記事が役立つと思います。こんな法律が、大した反対もなく通ってしまう国は、間違いなく後進国でしょう。

もしも必要な情報が得られなくなったら、あなたの生活がどう変わるか想像できますか?特定秘密保護法の怖さを簡単解説。

ケイ氏の報告内容その6:
「2016年10月、沖縄平和運動センター議長の山城博治氏が逮捕された。山城氏は裁判なしで5カ月間拘束された。長期間の拘束は山城氏の容疑事実に比して不適切に思える。日 本政府の行動は、デモと反対意見の表明をふさぎかねないと懸念している。
 沖縄での抗議活動に向けられた圧力を特に懸念している。公権力は国民に不均衡な処罰を科すことなく、公共政策への反対を表明する自由を侵害されずに抗議や取材を行えるよう努力を行うべきだ。」

 この事例は「中世の国:日本」を体現しているとして、海外メディアからも嘲笑されましたね。以下の関連記事では、ワシントンポストの主張も紹介しています。是非、ご覧下さい。

共謀罪が無くても、こんなひどい人権侵害が行われていることを知ってますか?国連など海外からも懸念が・・

最後に:
 上記で紹介したケイ氏の報告書は、客観的事実に基づいた冷静なものですが、これに対する日本政府の態度は、とても子供じみたものでした。理由も示さず感情的な反発を繰り返すだけでは、国際社会に対して恥をさらしているだけであり、国辱ものです。愛国者とは言えません。従順で無知な日本国民はダマせても、海外の専門家には幼稚な方法は通用しないのです。

 戦前回帰願望が強い反動右翼アベ政権にとって、上記の国連報告書はとても都合が悪く、痛いところを突いています。冷静さを失った態度がそれを証明しています。逆に言うと、日本国民にとっては必要な情報だということです。

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以上

コメント

  1. taro-u より:

    現在の安倍政権はまとうな政府とは言えません。
    記事にあるように自分の考えを信じ、他人の意見を聞き入れ
    ません。周りの国会議員たちも洗脳されたかのように黙って
    追随しています。自分たちが「国会議員として有権者に選ばれ、その人たちの代弁者として議会で発言できる」
    そんな立場であることは鼻っから思わず、熱にうなされてい
    るかのように次々に憲法にそむき挙句の果てに憲法改正。
    メディアを押さえ、官僚を押さえ、貧困経済政策によって
    階層化し分断し、国民までも押さえ込もうとしている。
    まさしく 自分たちこそ国家テロ集団と化している。

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